平成8年度 研究紀要 Vol.26 個人研究 -143/175page
「教育相談の姿勢を生かした授業づくり」についての研究
−『学ぼうとする力』に目を向けて−
長期研究員 齋藤 吉成
研究の趣旨 本研究では,「教育相談の姿勢」を次のようにとらえた。 ◎ 子どもの気持ちを理解しようとする姿勢 ◎ 子どもの話をよく聴こうとする姿勢 ◎ 教師自身が心を開こうとする姿勢 教師が授業でこうした姿勢に立ち,子どもが自分を表し認められたいという欲求が満たされ,満足感や成就感を持つことができるように一人ひとりの『ネームプレート』を用いることにした。ネームプレートは,子どもが発言したときのはか次のようなときに用いた。 ○ 小声ながらも貴重なつぶやきなどをしたとき ○ 資料から気づいたことを発言したり,作業をした感想を述べたりしたとき ○ 読むことや書くこと,作業することなどその子どもなりの得意な活動ができたとき,など 実践の結果,ネームプレートの活用は,「なんか発表した!って感じがする。だれが発表したのか分かるので良かった」(T男)の言葉に集約されているように,授業の中で自己存在感を味わい「学ぼうとする力」を身につけさせていくうえで有効であることが分かった。 I 研究の趣旨
昨年度,「教育相談の姿勢を生かした授業」について教師の意識・実態調査を行った。その調査をもとに,【改善が求められる授業】と【本研究で求める授業】を次のようにまとめた。
【改善が求められる授業】と【本研究で求める授業】
授業の主役は子どもである。しかし【改善が求められる授業】は,教師が自分の枠組みに子どもを集団としてはめ込み,一方的に知識や技能を注入しようとする傾向が強い。結果として,一人ひとりの存在は霞んでしまい,学びの意欲は失せてしまう。一方,【本研究で求める授業】は,教師が子ども一人ひとりの内面に目を向けてそれぞれに応じてかかわり,一人ひとりの学びを保障していこうとするものである。
いま求められる学力(自己実現していく力)は,「学ぼうとする力」「学ぶ力」「学んで得た力」の三つから成り立ち,互いに働きかけあう。特に「学ぼうとする力」は,学習を進めていくうえで大切なエネルギーとなる(福島県教育庁義務教育課編「指導資料『基礎学力向上の手引』」P.P.4−7を要約)。
本研究では,子ども一人ひとりの内面の動きに目を向け,『学ぼうとする力』を育んでいくために有効であると考えられる教育相談の姿勢を生かした授業づくりについて,二本松市立二本松第一中学校の渡邊健順教諭に依頼した実践をもとにして探ってい