平成8年度 研究紀要 Vol.26 個人研究 -151/175page
学校教育相談システムの活性化をめざす実践研究2
−高等学校における校内事例研究会の実施を通して−
長期研究員 白 土 俊 和
研究の趣旨 平成7年度の「学校教育相談システムに関する調査」から,教育相談に関する校内事例研究会の実施率は特に低い現状を示しており,その実施は緊急課題であること,また,教師自らも,その実施を学校教育相談システム活性化の第一の具体案として挙げていることがわかった。 本研究は,前述の調査結果を踏まえ,校内事例研究会の実施が学校教育相談システム活性化の具体策となり得るか,また,なり得るとすれば,校内事例研究会の実施はどのように学校教育相談システムの活性化につながるかを,実践的に探ることをねらいとして行ったものである。 校内事例研究会の実施率は,大規模校,高等学校において比較的低いため,実践研究は,大規模校である高等学校に研究協力校を得て,当初は研究協力校の教育相談部所属教諭と筆者で校内事例研究会を開催し,徐々に他の教諭の参加を募る形で進めた。その結果,次のようなことが明らかになった。 1. 校内事例研究会は,教育相談部(係)がより一層機能する機会となる。教育相談活動運営の推進役である教育相談部(係)のより一層の機能発揮は,学校教育相談システムの活性化につながる。 2. 校内事例研究会は,個々の教師が生徒理解を深め,生徒支援の力量を高めていく機会となる。個々の教師の変容は,徐々に組織全体の変容を促し,学校教育相談システムの活性化につながる。 3. 校内事例研究会は,教師間の教育相談への共通理解を図り,連携を強める機会となる。教師関係の強化は,徐々に組織全体の強化を促し,学校教育相談システムの活性化につながる。 I 研究の趣旨
学校教育相談の定着・充実のためには,各学校の教育相談システムの活性化が必要である。
筆者は,学校教育相談システムを教育相談のための組織,運営,施設・設備と定義し,昨年度その実態を把握するために「学校教育相談システムに関する調査」を実施した。その結果から,本県の学校の多くは,組織,運営,施設・設備,それぞれの面で,幾つかの解決すべき課題を抱えていることがわかった。
しかし,同調査からは,多くの教師が課題解決のための具体案をもっており,その提案の集約を通し,学校教育相談システムの活性化の指針を得ることもできた。
そこで,本年度は,昨年度の調査結果に基づき,解決が急がれる課題の一つであり,かつ教師自らも学校教育相談システム活性化の第一の具体案として挙げた,教育相談に関する校内事例研究会の定期的実施が,はたして学校教育相談システムの活性化の具体策となり得るのか,また,なり得るとすれば,その実施はどのように学校教育相談システムの活性化につながるかを実践的に探るべく,本主題を設定した。
なお,校内事例研究会の実施率は,小規模校,中規模校に比べ大規模校において低く,また,小学校中学校に比べ高等学校において低いため,本研究では,研究協力校に大規模校である高等学校を得て,その実情も十分に考慮しながら,校内事例研究会を定期的に実施することにした。