平成8年度 研究紀要 Vol.26 個人研究 -161/175page
高等学校における教育相談の推進・定着に関する研究(第2年次)
−生徒指導・教育相談の力量を高める校内研修会の在り方を探る−
長期研究員 水 野 晴 夫
研究の趣旨 本研究は,高等学校に教育相談を推進・定着させるため第2年次の研究として,教師の生徒指導・教育相談にあたって,具体的な対応の力量を高める校内研修会の在り方を実践的に探ったものである。 この研究から,次の点が明らかになった。 1. アンケート調査を行ったところ,本調査対象校の3分の2の高等学校で,「校務繁忙」と「機運が盛り上がらない」などの理由によって,生徒指導・教育相談の校内研修会が実施されていない。 2. 校内研修会を,問題行動への対応をテーマに,全職員で学期に1回,事例研究・協議形式で実施したいと多くの教師が考えている。 3. 校内研修会の内容として,「保護者へのよくないかかわり方」,「不登校生徒の気持ちを考えること」が,好評だった。 4. 事例研究会を実施したところ,段階を追って,校内に事例に対応する態勢が出来てきた。 また,これに合わせ,研修意欲が高く,まとまりのある校内組織との関係で,教員一人ひとりの力量が高められた。 5. 生徒への指導援助の自己チェックリスト,及び生徒が行う相談的教師のチェックリストの実施は,生徒への対応の力量を高めるきっかけとして効果があった。 I 研究の趣旨
昨年度(第1年次)は,研究主題の解決を図るために,まず,教職10年経験者を対象に,教育相談の意識調査を行った。
その結果,生徒指導の困難度が,一段と高まっていること,教育相談の予防的・開発的な機能から,日々の教育相談活動を見直すことが,課題として浮き彫りにされた。
そこで本年度(第2年次)は,教育相談のもつ予防的・開発的な機能から,教師が生徒指導・教育相談を進めていく上で,具体的に対応の力量を高められる校内研修会の在り方を実践的に探ることにした。
なお,本研究では教師の生徒指導・教育相談の力量を具体的対応の技術と生徒に接する心の総和と定義した。
II 研究のねらい
本年度は,高等学校における教育相談の推進・定着のため,教育相談の予防的・開発的な機能から,教師の生徒指導・教育相談にあたって,具体的な対応の力量を高める校内研修会の在り方を探ることをねらいとした。
III 研究の方法
1.研究の対象
本研究が目指す,校内研修会の在り方を探るために,次の学校と本教育センター研修講座受講者を対象に調査を実施した。
(1)研究協力校 福島県立A高等学校(定時制課程)
○ 在籍生徒数 59名
○ 本務教員数 10名
○ 入学前不登校生徒率 39.0%
○ 実態 いわゆる問題を抱える生徒が多い。全職員の生徒指導・教育相談への研修意欲が高く,まとまりもよい。本年度から,月1回の校内研修会