研究紀要第109号 「「生きる力」としての「学力」を育てる学校教育の創造」 -002/166page

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の中核となって,人間としての在り方を考えていかなければならないにである。

中教申の中では,これまで述べてきたような改革の動きに応え,21世紀をいきる子どもたちに培うべき能力を,「生きる」という言葉をキーワードにして,次のように述べている。

・自分で課題を見つけ,自ら学び,自ら考え主体的に判断し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力
・自らを律しつつ,他人と共に協調し,他人を思いやる心や感動する心など,豊かな人間性
・たくましいいく生きるための健康な体力

つまり,問題解決カ,豊かな人間性,そして,たくましく生きるための健康や体カ,この3つを総合的に育むことが「生きるカ」を育てることになるというように考えることができる。この3つは独立してあるものではなく、複雑に絡み台い、有機的に結びついた構造になっており、総合的に育んでいく必要がある。

II 研究課題設定の背景と「生きる力」

研究課題である「『生きる』」としての『学力』を育てる学校教育の創造」は,今日の学校教育が抱えている深刻な諸問題の解決と,先行き不透明な時代にも子どもたちがなお,明るくたくましく生きていけるような方を育てることができる学校教育のあるべき姿を求めて設定した。

つまり,学校教育の今日的課題を研究の動機として,「生きるカ」としての「学カ」を育てる学校教育を具現するための方策を探るものである。

この研究の動機としての学校教育における今日的課題は,そのまま研究課題設定の背景であり,中教審答申が「生きるカ」をその中核にしなければならなかった背景と全く同じである。

その背景とは,lつに近年になって急変した子どもたちの生活の現状であり,2つに,その子どもたちの生活の現状の中でも特に憂慮されるいじめや登校拒否,校内暴カ,受験競争等の問題である。

こうした子どもたちの生活とそれを取り巻く環境は,これから先も激しい変化を余儀なくされるに違いないが,それはまさに先行き不透明な,変化の激しい時代に身を置いて生きていかなければならない厳しい、試練なのである。ここに,予測することが難しい「これからの社会」の変化に対応できる能力を子どもたちに育てなければならないという8つ目の背景がある。

「生きるカ」を問題にしなげればならない背景は中教審の答申に要約されるのであるが,次に、3つの観点から研究課題設定の背景を,さらに具体的に述べてみたい。

1 子どもたちの生活の現状

子どもたちの中には,学校での生活や塾、自宅での勉強等の時間のほか,テレビ,パソコン等のメディアとの接触にもかなりの時間を費やし、ゆとりのない忙し。、生活を送っでいる子どももいる。

また,群れて遊ぶことが少なくなった子どもたちには生活経験や自然体験の機会が減少するとともに擬似体験や間接体験が多くなる傾向にあり,子どもたちの社会性不足や人間関係をつくるカが弱まっていることが危倶されている。

さらに,子どもたちを対象にした日常生活や自分の将来に関する調査では,子どもたちの自立の遅れや倫理観の欠如など,心の教育の問題とともに,体力・運動能力についても筋カや持久力の衰え等が指摘されている。

こうした子どもたちの生活の現状が「生きるカ」を問題にする1つの背景になっているのである。

2 特に重要な課題

「生きるカ」を問題にしなければならない要因には,次に述べる3つの課題がある。


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