研究紀要第112号 「基礎学力向上のための授業改善に関する研究」 -056/166page

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学力には,開心・意欲などの情意的側面,思考・判断,知識・理解などの認知的側面があるが,それぞれの重要性は認識されていながらも,実際の指導では一方にのみ教師の意識が働いてしまっている傾向がある。学カが向上するときにはこの両者が相互に作用し合って高まっていくものと考えられる。基礎学力の同上をめざした学習指導を考えるとき,情意面と認知面をともに重視し,それらのかかわりに配慮して学習指導にあたっていくことが大切である。そこで本研究では,関心,意欲が持続し,思考活動が活発になることが,基礎学カの向上につながるという考えから研究を進めた。

2 科学的な思考のとらえ方

理科の目標のひとつは科学的思考カの育成である。技術・家庭の目標は,生活に必要な基礎的な知識と技術の習得,生活を創意工夫する能カの育成であるが,知識や技術の習得及びそれらを活用する過程,創意エ夫の過程では自分の頭でもめを考え,判断し表現することが要求される。技術・家庭においても思考カの育成は大切であり,その思考の基礎になるのほ科学的な思考である。

科学的な思考は,―般に次表右側の1(○1)〜10(○10)のように,いくつかの要素に分けてどらえられる。これらは,科学的思考方を評価するときの観点としてよくあげられる。理科や技術・家庭の学習で,児童生徒がある課題を解決しようとしたり,ある事象を理解しようとしたりするとき,その課題や事象が単純か複雑か,具体的か抽象的か,などの程度に応じてこれらの要素の中で必要な要素が組み合わされ,科学的な思考活動が行われる。

ある事象を理解するとは,事象にみられる事実関係,事象と事象の間の相互関係や因果関係,複数の事象間の総合的な関係をつかむことであると考えることもできる。表の左側のI〜IVは,このような事象認識の段階という視点から科学的な思考活動をとらえたものである。中央の線は両者のかかわり合いを示す。

[科学的な思考]

科学的な思考の図

事象認識の各段階で働く思考の内容は次表のようなものである。

I事実関係
 つかむ。
注目して考える。具体的事象
を数多く見つけて比較し,共
通点や差異点を見いだす。
II相互関係
 つかむ。
事象を条件とのかかわりで考
える。事象の起こる条件から
変化の用件をとらえる。
III因果関係
 つかむ。
分析的に考える。事象の起こ
る要因や,量的変化,時間的
変化の規則性をとらえる。
IV総合関係
 つかむ。
事象と事象の相互関係や規則
性を総合的に考える。

本研究では,思考活動を,当面の課題を解決し,事象の理解を深めるための活動であると考え,科学的な思考を上記I〜IVのように事象認識の段階という視点からとらえた。さらに,科学的な思考ができ


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