研究紀要第112号 「基礎学力向上のための授業改善に関する研究」 -062/166page
(5)思考活動の変容
図5は,事前,事後に行った思考活動の程度についての自己評価の結果を項目ごとに学級平均で表したものである。事前調査(調査3))では,項目7「自分の考えをまとめたり,発表したりする」が他の項目と比べてかなり低かったが,事後調査では,項目Tは伸長度が大きく,他の項目と同程度の値になっている。これは,素朴概念をもとにしたグループ編成による話し合い活動や,概念地図やイメージ図をかく活動の効果があったためである。また,思考活動を活発にするうえで,このような「話し合う」「書く」などの表現活動は効果があった。
(6)関心・意欲と思考活動との関係
図6は,事後の「関心・意欲の程度」と「思考活動の程度」との関係を表したものである。両者の間には,強い相関(相関係数0,85)があることから,関心・意欲の高い児童ほど思考活動が活発である傾向があることがわかった。
(7)思考活助と事後テスト成績との関係
図7は,「思考活動の程度」と「事後テストの正答率」の関係を表している。両者の間には,大きな相関はみられなかったが,事後テスト(調査5))の学級平均正答率は,88.3%とかなり高かった。素朴概念をもとにしたグループ編成による話し合い活動や,概念地図やイメージ図をかく活動が児童の関心・意欲を高め,思考活動を活発にし それが高い正答率につながったと考えられる。
4 まとめ
(1)関心・意欲を高め思考活動を活発にするのに,素朴概念の異なる児童同士のグルレーフ°編成による 話し合い活動は効果があった。
(2)児童の思考を促すのに,概念地図やイメージ図 をかく活動は効果があった。また教師は,児童の 思考の変容を把握でき,適切な支援を行うことが できた。
(3)児童は学習前に,事象に対して既に何らかの考 えを素朴概念としてもっている。児童の素朴概念 を把握し,それに応じた支援を行う必要がある。