研究紀要第114号 「豊かな人間関係を育む指導援助に関する研究 第1年次」 -113/166page
2 発達段階と人間関係の深まり
児童生徒の人間関係をつくるカを育む指導援助にあたっては,発達段階を考慮する必要があることから,小学校・中学校における人間関係の深まりを,次のようにとらえた。
小学校低・中学年の時期は,「なかよくなりたい,みんなと―緒に遊びたい」という気持ちからかかわりが始まり,その後友達への関心を持ち始め,外見や行動上の特徴などから自分や友達がわかるようになり,「―緒にいたい,自分のことを知ってほしいでいう思いが徐々に強まってくる。
小学校高学年の頃になると,自分を意識し始め,趣味や意見の―致などの面から自分や他者を見つめたり,友達とのより深いつながりを求めたりするようになり,「もっと知りたい,―緒に活動したい,大切にしたい」という思いが強まってくる。
中学佼以降になると,考え方や感じ方,ものの見方などの面から自己理解や他者理解が深まり,友達に対してより親密な関係を求めるようになり,「知りたい,―緒に活動したい,大切にしたい」という思いも,相手により差が人きくなってくる。
3 指導援助の在り方
前述の「人間関係をつくるカ」,「発達段階と人間関係の深まり」を踏まえて,指導援助の在り方を以下のように考えた。
児童生徒の人間関係をつくる力を育成するためには,児童生徒理解を基本に,本来持っている力を引き出すかかわりが必要となる。指導援助の実際にあたっては,基本的信頼感や自己肯定感,思いや技能に目を向けた指導援助とともに,それらを育む環境である学級集団への適切な援助が必要である。このことから,基本的な指導援助の方向性を次のように考えた。
(1)安心感が得られ,関わりあうことが楽しいと実感できる学級集団を目指した指導援助
他者にかかわろうとする思いや技能を高めるためには,児童生徒が安心感を持って生活し,かかわり合うことが,楽しいと実感できる学級集団を目指した指導援助が大切である。このためには,教師が児童生徒のありのままの姿を受け入れ,学習の援助者として日ごろから受容的,支持的なかかわりをしていく必要があると考える。
(2)互いに相手を認め,受け入れ合うことを通して 自己肯定感を高める指導援助
他者にかかわろうとする思いや技能は,基本的信頼感が土台となり,自己肯定感によって支えられているものであり,この自己肯定感が弱いと,かかわりの結果への不安から,他者への思いを表現できない。そこで,互いに相手を認め,受け入れることを通して自己肯定感を高めるための指導援助が大切である。小学校低・中学年においては,教師からの働きかけに,小学校高学年・中学校においては,児童生徒相互の働きかけに焦点をあてた指導援助が必要であると考える。
(3) 他者とのかかわりを深めたいという思いと,そ の思いを伝えるための技能を高める指導援助
他者にかかわろうとする思いがあっても,周囲の思惑が気になって,伝えることをためらっている児童生徒も数多くいると思われる。そこで,児童生徒それぞれの思いを表現し合い,共有できる場を設定するなどの指導援助が大切である。
また,他者への思いを伝える技能は,相子の思いを受け止めた上で発揮されるものであることから,この思いを受け止めることにも目を向けて技能を高める指導援助が必要であると考える。
なお,他者にかかわるうとする思いとしては,「相手をもっと知りたい」,「一緒に活動したい」,「相手を大切にしたい」に,また,思いを伝える技能としては,「相手の気持ちや考えを考えを聞く」,「自分の気持ちや考えを話す」,「相手の立場や考えて接する」に絞る事にした。
III 研究計画
[第1年次]
(1)研究主題,研究計画の樹立
(2)人間関係をつくる力の分析と基本的な指導援助