研究紀要第120号 「豊かな人間関係を育む指導援助に関する研究 第2年次」 -092/117page

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考えや行動を規制する。そして,友達や家族の感情や期待,行動の仕方などを知る(他者理解)ことによって,自分自身をさらに知る(自己理解)ようになる。特に,肯定的な自己概念や自尊感情は,高い自己肯定感を形成し,「新しい人間関係をつくりたい」「現在の人間関係を深めたい」など,他者にかかわろうとする能動的な思いを高めていく。しかし,実際には,体験,集団遊びの欠如などから,「自分の気持ちをどう伝えたらよいか」「相手とどう付き合ったらよいか」など,人間関係でつまずいている児童生徒が少なくない。

これらのことから,本研究では,基本的信頼感を土台とした「自己肯定感」「他者とのかかわりを深めたいという思い」「思いを伝える技能」を人間関係をつくる力とおさえた。さらにこの力は,

 1. 他者への関心を持つ

 2. 他者にかかわりたいという思いを持つ

 3. 他者にその思いを伝える

 4. 思いが受け入れられる

という他者とのかかわりの4つの段階を通して深められると考えた(資料1)。

(資料1)人間関係をつくるカの構図と人間関係かつくられる4つの段階
(資料1)人間関係をつくるカの構図と人間関係かつくられる4つの段階

1 「自己肯定感」について

 (1) 自己肯定感の概念規定

 認知と感情が,人間の行動を規定する要因であることから,本研究では,自己肯定感を「知覚された自己についての肯定的な認知(自己概念)と,それによって生じる満足の感情(自尊感情)から構成される」と概念規定した(資料2)。

なお,本研究においては,自己概念を「肯定的な自己理解」,自尊感情を「肯定的な自己受容」と同義にとらえた。

(資料2)自己肯定感の概念図
(資料2)自己肯定感の概念図

1. 自己概念(肯定的自己理解)

自己概念は,個々の点についての認知の結果として把握した自己の特徴や属性の集合である。C.R.ロジャーズは,「自己知覚及び実存の知覚が変化す


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