研究紀要第120号 「豊かな人間関係を育む指導援助に関する研究 第2年次」 -093/117page

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ると,行動も変化する。」 注1) と述べ,自己概念の変化が行動化に影響することを指摘している。

 2. 自尊感情(肯定的自己受容)

 自尊感情には2つの異なる内包的意味があり,自分を「とてもよい(very good)」と考える場合と「これでよい(good enough)」と考える場合とを区別する必要がある。前者は優越性や完全性の感情であり,後者は,自分が設定した価値基準に照らして自分を受容することから,自己に好意を抱き尊重するものである。本研究では,個人内基準の中で自己を肯定的にとらえる後者の立場を重視したい。

また,自尊感情の主な形成要因として次の3つが挙げられる。

 ◇ 他者(特に重要な他者としての両親,教師,友人など)からの評価や承認による気づき

 ◇ 同一視に基づく取り入れ

 ◇ 役割遂行や様々な経験による気づき

 (2) 自己肯定感形成のプロセス

 自己理解は,言動に対する他者の評価や働きかけによって深められる。これは,他者理解も深めることになることから,自己理解と他者理解は,並行して深まっていくものと考えられる。自己受容は,他者の肯定的な受容の態度が自己の嫌悪する側面を浄化させ,再び自己を見つめ直すことによって深められる。その促進については,ありたい自己を肯定する方向と,ありたくない自己を否定する方向の2面からのアプローチが考えられる。したがって自己肯定感の形成は,肯定的な自己理解と自己受容との関連,そして他者とのかかわりの在り方がポイントとなる。

(資料3)「自己肯定感」形成のプロセスモデル
(資料3)「自己肯定感」形成のプロセスモデル

これらのことから,自己肯定感は,肯定的な「自己理解」「自己受容」「他者理解」「他者受容」から構成されるととらえ,その形成のプロセスをモデル化し,研究の焦点化が図られるようにした(資料3)。

2 他者とのかかわりを深めたいという「思い」について

思いを伝え,受け入れ,共有し合う中,相互の理解が深まり,相手にもっとかかわりたいという能動的な思いが高まっていく。そうした過程で人間関係がつくられる。したがって,発達段階を考慮しながら,安心感を高め,自分を素直に表現できたり,信頼感を高め,互いの思いを受け入れ合ったりできる児童生徒の育成,学級の醸成が大切になる。

そこで,小学校・中学校の時期における,かかわりを深めたいという思いを,次のようにとらえた。

小学校低・中学年の時期は,「仲良くなりたい,一緒に遊びたい」という気待ちからかかわりが始まる。その後,友達への関心をもち,外見や行動上などから自分や友達が分るようになり,「一緒にいたい,自分のことを知ってほしい」という思いが徐々に強まっていく。

小学校高学年の頃になると,自分というものを意識し始め,趣味や意見の一致などの面から自分や他者を見つめるようになる。そして,友達とのより深いつながりを求めるようになり,「もっと知りたい,一緒に活動したい」という思いが強まってくる。

中学校以降になると,ものの見方,考え方や感じ方などの面から自己理解や他者理解が深まり,友達に対してより親密な関係を求めるようになる。そこでは,相手によって「知りたい,一緒に活動したい,大切にしたい」という思いに個人的な差が生まれるようになってくる。

3 思いを伝える「技能」について

友達に対する思いをうまく表現(コミュニケーシ


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