研究紀要第120号 「豊かな人間関係を育む指導援助に関する研究 第2年次」 -096/117page
5 研究協力校における人間関係をつくる力に関する事後調査
6 実践の成果と課題の分析
7 研究のまとめ
V 研究の実際(2年次)
「自己肯定感が高まる」「かかわりを深めたいという思いが高まる」指導援助のあり方に焦点を当て,研究協力校を得て実践的に研究を進める。
1 人間関係をつくる力に関する調査
児童生徒の人間関係をつくる力を中心に,その実態を明らかにし,適切な指導援助の方向性を探るための事前調査(資料6)を実施した。
調査は,選択肢法(4件法)と記述式の組み合わせを用い,研究協力学級である小学校3年,5年,中学校2年の3学級を対象とした。
また,この調査用紙は,指導援助の有効性を探るための事後調査用紙としても活用した。
<調査項目内容>
◇ 「自己肯定感」の程度をとらえる項目 【1〜5】 ◇ 他者とかかわりたい「思い」の程度をとらえる項目 【7〜9】 ◇ 思いを伝える「技能」の程度をとらえる項目 【10〜12】 ◇ 人間関係をつくる力が高まるための背景をとらえる項目 【6,13〜16】 ◇ 学級の雰囲気をとらえる項目 【17】 ※【 】内の数字は,設問番号を示す
上の図表は,事前調査結果の一部である。学年が上がるにつれて肯定的他者受容の数値が高くなる反面,受容感の数値は低くなっている。また,肯定的な自己理解や否定的な自己理解の数値も同様の傾向を示している。これは,肯定的な感情の交流が十分でないことを意味するものと考えられる(資料7)。
2 視点をあてる児童生徒
学童期の発達課題の一つは,仲間集団の中での対人関係を良好にすることであり,その中で社会性が高まり肯定的な自己概念も培われていく。したがって,学童期には,友達との関係がもてない,つくられないという閉鎖的な人間関係が問題となる。また,昨年度の調査から,学年が上がるほど,特定の親しい友人との関係に固定化された交友関係の傾向がみられることが明らかになっている。この傾向は,相互の自立,自由,独立が阻まれる状態を生み出すこともある。さらには,他の友人との交流が乏しくな