研究紀要第120号 「豊かな人間関係を育む指導援助に関する研究 第2年次」 -097/117page
り,自分にとって都合の良い人間関係しか学ばないという弊害もでてくる。
本研究では,小学校段階では,人間関係が閉鎖的な児童に,中学校段階では,人間関係が固定的な生徒に焦点を当てながら,変容の様子や働きかけの有効性を探っていくことにする。
3 人間関係をつくるカを育む援助過程の工夫
人間関係は,肯定的な感情交流が図られることによってつくられ,促進される。したがって,児童生徒相互の肯定的な感情交流が促進され,自己理解や他者理解が深化する活動を,発達段階や学級の実態を考慮し効果的に援助過程の各段階に位置付けていく必要がある(資料8)。
導入時には,全体に対し雰囲気を和らげる活動を行い,安心感を高めながら以後の活動における感情表出が促進されるようにする。
展開時には,ゲームやプレーンストーミングの手法を用い,児童生徒相互の感情交流を促進したり,対話の場やロールプレイを効果的に取り入れながら自己理解や他者理解が深まるようにする。
終末の段階では,感情の明確化や共有化のため,シェアリング(振り返り)の場を設定する。
また,授業までのレディネスを高めたり,授業のねらいを強化したりする日常的な援助の位置付けを図る。
4 指導援助の実際
《小学3年生》
(1) 事前調査結果の分析と指導援助のねらい
事前調査の結果は,(資料9)の通りであった。
「あてはまる」「大体あてはまる」を足した割合でみると,5. 肯定的な他者受容や8. 一緒に活動したい思い,9. 大切にしたい思いは高い数値を示したが,一方,3. 否定的な自己理解と6. 受容感の低さが認められた。否定的な自己理解と受容感が低い理由として,次の3点が考えられる。
◇ 他者からの肯定的な働きかけが少ないため,否定的な自己理解が低い。