研究紀要第120号 「豊かな人間関係を育む指導援助に関する研究 第2年次」 -098/117page
◇ 前記の実態のため,友達と「かかわりたい思い」は強いが,受容感を得られず,互いの理解が深まっていない。
◇ 自己内対話が十分でないため,集団の中での自己の存在感やよさを実感として得られないでいる。
また,事前調査から,自分のよさや欠点を他者との関係でとらえる傾向が強いこともわかった。以上のことから,指導援助のねらいを次のようにした。
集団の中での自己の存在を実感させながら,肯定的な自己理解,他者理解が深まる指導援助を工夫すれば,自己肯定感の高まりとともに,友達とかかわろうとする思いも高まるであろう。 (2) 実践
授業1 他者の存在を知り,互いの理解を深め合える授業 1. 「ジャンケン列車」を取り入れたウォーミングアップ(全体)
音楽が止まった時に出会った二人がジャンケンをし,負けた人が勝った人の後ろにつながり,また列の先頭同士がジャンケンを繰り返しながら列を伸ぱしていく,体での触れ合いや動きのある「ジャンケン列車」を取り入れた。振り返りカードで83%の児童が「楽しかった」と答えているように,伸び伸びとかかわり合う姿が見られた。
2. 他者の存在を実感しながら互いの理解を深める「4つの窓ゲーム」(個→小集団→全体)
教師からの,「このゲームでみんなの考えや気持ちがわかって,もっと仲良しになれたらいいな。」という働きかけで,ゲームのねらいが児童自身にとらえられ,ゲームへの意欲は高まっていった。
実際の「4つの窓ゲーム」では,友達と楽しくかかわり合いながら,自分と同じ,または違う好みを持つ友達の存在を実感できるよう,個→小集団→全体のプロセスの中に,自己決定の場(個)やグループ内(小集団),グループ同士(全体)の発表の場を設定した。
自分の好きな窓(例えば,「春」「夏」「秋」「冬」の4つの季節から好きな季節を選び,指定された場所に移勤する)を自己決定する場では,どの児童も4つの窓を見渡し,迷うことなく移動する姿が見られた。
それぞれの窓に移動したあと,選択した理由を伝え合う小集団での発表の場を設定した。そこでは,次のような発表が行われていた。
【各ダループ内での発表の例】 〔春の窓〕:春はあったかいから。春は春だから。 〔夏の窓〕:夏休みがあるから。海(で泳げる)。 〔秋の窓〕:紅葉がきれい。食欲の秋だから。 〔冬の窓〕:クリスマスプレゼントがもらえる。 視点をあてたM男は,友達に左右されることなく自分の考えで「夏」の窓を選択して移動するが,初めはグループからやや離れた位置にいた。S子に促され「海」と発表し,そのS子も同じ考えを発表すると,うれしそうな表情を見せた。その後は,友達の考えを聞こうとする意欲の高まりが見られるよう