研究紀要第120号 「豊かな人間関係を育む指導援助に関する研究 第2年次」 -102/117page

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それを受容できるようになってきたことが,自己肯定感の高まりに大きく影響していると考えられる。

 イ 「安心感や信頼感を持ち,共に活動したいと思う児童」から

 事後調査の「あてはまる」「大体あてはまる」児童の割合で見ると,「知りたい思い」「一緒に活動したい思い」に,それぞれ7.9%,2.5%の上昇が見られた。また,友達に受け入れられているという受容感や,一緒にいるのが楽しいと感じている心理的距離の項目にも高まりが見られたことから,肯定的な他者理解を図る指導援助が,他者への関心を高め,共に活動したいと思う「思い」の高まりに有効であったと考える。

 ウ 視点をあてた児童の姿から

 自己肯定感は1.4と,学級の平均値2.0を下回っており,特に,肯定的な自己理解は1,よさの自己受容数も0と,自信のなさが感じられた。

事後調査では,本人が「話す技能」を1と,さらに評価を下げた(事前調査では,3)ように,思いはあっても,それをうまく伝えられないことが他者からの働きかけを弱めることとなり,自己肯定感の形成に影響したものと考えられる。

しかし,観察を通して,2度の指導援助の中では,自分の考えやよさが友達に受け入れられる喜びを感じ取る姿が見られた。このことは,他者からの肯定的な働きかけを継続していくことの必要性を示唆するものである。

以上のことから,互いのよさに目を向けさせながら肯定的な感情交流を促進し,そこでとらえた自分や友達のよさを明確化,共有化させるシェアリングの場を設定した指導援助が自己理解,他者理解を深め,自己肯定感の形成に有効であったと考える。

《小学5年生》

 (1) 事前調査結果の分析と指導援助のねらい

 人間関係をつくる力について,平均値(4件法)を比較すると,「自己肯定感」(1.9)が,「他者とかかわりたい思い」(3.2)や「技能」(2.9)より低いことがわかった。次に,自己肯定感を構成している要素について見てみると,肯定的な他者受容の数値は高いが,肯定的な自己理解は「あてはまる」「大体あてはまる」を合わせても76.7%と,他者受容と比較して13.3%程度低い。また記述式によるよさの自己受容に関しては,趣味や特技でとらえる割合が40%を越えており,他者とのかかわりからよさをとらえることはやや弱いと考えられる。

ここで,「自己肯定感形成のプロセスモデル」(P93,資料3)をもとに,自己理解が低いことを次のようにとらえてみる。

肯定的な自己理解は,自己観察・自己洞察といった自己内対話によって形成されると考えられる。また,自己内対話を活性化する鍵となっているのが,他者からの肯定的な働きかけであり,その働きかけを強化する媒体が他者理解であると考えられる。

以上の点から,他者理解に基づく肯定的な相互の働きかけが十分でないため,自己内対話が促進されず,その結果,自己理解が高まっていないのではないかと考えた。

また,よさの自己受容に関しては,上述の他者理解に基づく相互の働きかけを強化しながら,自己内対話を促進し,他者とのかかわりを通して自己のよさに気づいたり,受け止めたりすることができるようにしたい。そのために,自他のよさを伝え合ったり,取り入れ合ったりする活動を設定し,自分の気持ちや考えに気づいていく振り返りの場を位置付けた指導援助を行っていきたいと考える。

以上のことから,指導援助のねらいを次のようにした。

他者から,そして他者へ,相互の肯定的な働きかけを強化しながら,他者理解が深まる指導援助を工夫すれば自己理解や自己受容が高まり,自己肯定感や他者へかかわろうとする思いが高まるであろう。

 (2) 実践


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