研究紀要第120号 「豊かな人間関係を育む指導援助に関する研究 第2年次」 -103/117page
授業1 互いのよさを伝え合う活動を通して,他者理解,自己理解の高まりをめざした授業 1. 「パッチンジャンケン」を取り入れたウォーミンク・アップ
二重円を作り,音楽が止まってお互いに相手を確認したら,目を見て握手し,ジャンケンをするパッチンジャンケンを行った。回数を重ねるにつれて,うちとけた雰囲気になり,緊張感がほぐれていった。また,偶然性の高いべア作りによって男女間での拒否的な態度は,あまり見られなかった。
2. 肯定的な他者理解,自己理解が高まる「いいとこさがし」
デモンストレーションは,教師と数名の児童で行った。教師のいいとこさがしをするデモンストレーションにより,緊張感がほぐれ,活動のルールをうまくとらえることができた。途中でつまったり,同じことの繰り返しになったりする場合などの説明も事前に行ったので,活動への抵抗が少なくなったと思われる。
シンキングタイムでは,日常の指導(事前にノートに友達のいいところを書き出しておく)などが生かされ,友達のよさを確認したり,活動に入る前の心の準備となったりした。このことによって,スムーズに次の段階の活動に入ることができた。
いいとこさがしの活動では,友達のいいところを順々に手拍子をしながら,伝え合った。否定的なことや悪ふざけなどの内容は無く,活動そのものに集中して,どのグループも行うことができた。特に,自分のいいところを友達に言ってもらう場面では,何を言ってもらえるんだろうか,何も言ってもらえないのではないかといった期待や不安が入り交じった表情の児童が多く見られた。
しかし,自分のいいところを伝えられると表情が緩み,笑顔も多く見られ,やはりうれしいんだなということが誰の目にも伝わってきた。いいところを伝える際に,ノートを活用している児童も多かった。
さらに,教師がにこやかな表情で各グループの活動に加わりながら,発表内容にうなずいたり,児童と一緒に手拍子をして,その雰囲気を盛り上げたりしたことも,この活動を促進させることにつながった。
3. 互いのよさを伝え合う活動を通して得られた喜びや驚きを明確化・共有化するシェアリング
発表の前に,「一言感想」(資料15)で書く活動を取り入れたことによって,児童一人一人が,いいとこさがしをしたり,されたりすることによって生じた気持ちを明確にすることができた。「はずかしかったけれども,嬉しかった。」「私って,こんな風に思われているんだな。」等の感想が多かった。また,それをもとにグループで発表したため,発表そのものに抵抗は見られず,「私と同じようにみんなも感じたのだな。」といった共有化も図られた。
また,「振り返りカード」(資料16)により,「友達にこんなにも思われている」といった気持ちや自分のよさを確かめたり,新しい発見があったりするなど,自己理解を高めることができた。