研究紀要第120号 「豊かな人間関係を育む指導援助に関する研究 第2年次」 -107/117page
理解が高まったことがわかる。
○ 「無人島SOS」の活動(2回目の授業)では,自分の考えをしっかり伝えたり,友達の考えを取り入れたりして,楽しく活動できた。1回目の授業に比ベ,表情も明るく,安心感が感じられた。このことから,他者理解・他者受容が高まったことがわかる。
ウ 事後調査及び日常生活の様子から
○ 調査項目の合計の平均値を見ると,事前の1.9から事後は2.9へ上昇した。
「自己肯定感」の程度をとらえる項目では,平均値が「1.4→1.8」に,4件法では,「肯定的な自己理解」が「2→3」に,「肯定的自己受容」が「2→4」にそれぞれ上昇した。「よさの自己受容」では,「友達に明るく接することができた」ことを挙げていた。
○ 「他者とかかわりたい思い」の程度をとらえる項目では,平均値が「2.3→3.0」に,4件法では,「知りたい思い」「一緒に活動したい思い」が「2→3」に上昇している。
○ 日常生活では,宿泊学習において,レクリェーション係として,ゲームの準備や運営にかかわるなど積極的な面が見られるようになった。
《中学2年生》
(1) 事前調査結果の分析と指導援助のねらい
事前調査の結果,ほとんどの生徒が友達を肯定的に受容している(93.1%)のに,受容されていると感じている生徒は少ない(13.8%)ことが明らかになった。受容されていると感じている生徒が少ないのは,「みんなに信頼されている」ということを重みのあるものととらえていたり,まだ十分に受け入れられていないという気持ちをもったりしているためであろう。また,生徒たちが必要以上に他者の目を気にし,仲間外れになる不安を感じながら生活している様子がうかがえる。
このことから,指導援助のねらいを次のように設定した。
互いに構えることなく感情を伝え合う指導援助を工夫すれば,生徒一人一人の自己や他者に対する理解や受容が深まるとともに,自己肯定感や互いにかかわり合おうとする思いも高まるであろう。 (2) 実践
授業1 肯定的な受け止め合いを通して他者理解を深め,もっとかかわり合いたいという思いの高まりを促す授業 1. 「ジャンケンゲーム」を取り入れたウォーミングアップ
左手で握手をしたまま右手でジャンケンをし,勝った方が右手で相手の左手を叩くというジャンケンゲームを行った。ここちよいスリルと緊張感の中で,勝ったのに守ったり,負けたのに叩いたりしながら,生徒たちはいつの間にか夢中になってゲームを楽しんだ。中には,勝ったときのうれしさや負けたときの悔しさを,体全体で表現している生徒も見られた。このように感情を表出しやすい雰囲気づくりをした上で,次の活動に入った。
2. 肯定的な受け止め合いを援助する「何が描けるかな?」
誘発線を利用して好きな絵を描き,できあがった絵を通して互いのよさをほめ合うという活動である。生徒たちが自由にのびのびと描けるように,(資料19)のような異なる誘発線が描かれてある2種類のカードを準備し,好きな方を選ベるようにした。
また,カードには上下左右がなく,どの方向から見て描いてもいいことや,給の上手・下手はないと