研究紀要第120号 「豊かな人間関係を育む指導援助に関する研究 第2年次」 -108/117page
いう説明をして,描画に対する抵抗感の軽減を図った。さらに,教師自らが実際に描いて見せるなどの働きかけに,生徒たちは安心して描画に取りかかった。
感想交換時には,本気になって一生懸命に互いのよさをほめようとする姿も見られた。「構図がいい」とか「おもしろい」など絵のよさについての感想の他に,「あたたかい感じがする」とか「○○さんらしい」など,全体の雰囲気や人柄についての感想も聞かれた。
3. 気づきや心の動きを共有しながら,自分自身の感情を明確化するシェアリング
シェアリングは,はじめに各班で行い,その様子を代表が全体の前で発表するという方法で行った。自分のことについての発表だけで終わってしまった生徒もいたが,どの発表に対しても温かな拍手が自然に起こり,なごやかな雰囲気が持続した。
また,自分自身や友達の新しい面への理解を促すために振り返り用紙を準備し,授業中の自分の気持ち,特に他者とのかかわり合いを通して感じたことや気づいたことを明確化できるようにした。
<結果の考察>
「友達(の絵)をほめることができたか」について尋ねたところ,男女間で下のような差が見られた。
ほとんどの男子が「とてもよくできた」「大体よくできた」と答えているが,そのうちの数名は「ほめることができてよかった」という感想を述べている。「なんとかしてほめなけれぱならない」「うまくほめられなかったらどうしよう」などの気持ちをもっていたのだろうと考えられる。これに対し,半数の女子が「あまりできなかった」「できなかった」と答えている。中には,教師の目の前で実際にほめていたのに,「どうほめたらよいかわからない」などと述ベている生徒もいた。「あんなふうにほめたが,相手はどう感じたのかわからない」という自信のなさが表れているのだろう。グラフでは男女間に大きな差があるように見えるが,男子も女子も心の底では「自分の言葉が相手にどう受け取られるだろうか」という不安をもっていることが振り返り用紙の記述欄から読みとれた。
「友達にほめられてどうだったか」について尋ねた結果は,次のグラフのとおりであった。
男女共ほとんどの生徒が,自分のよさをほめられることに対して嬉しさを感じている。このことからも,肯定的な受け止め合いが生徒たちの人間関係づくりの上で重要なポイントになっていると言える。