研究紀要第120号 「豊かな人間関係を育む指導援助に関する研究 第2年次」 -109/117page
なお,「嬉しくなかった」と「無回答」は,合わせて男子2名,女子3名であった。この生徒たちは「ほめられていない」「何とも思わない」とその理由を述べている。受け止め合いがうまくできずに,一方通行に終わってしまった結果であると考えられる。
この授業が生徒一人一人にどのように受け止められたかをみるために「『何が描けるかな?』は楽しかったですか」と尋ねてみた。女子の1名を除いて,「とても楽しかった」「まあまあ楽しかった」と答えており,ほとんどの生徒がこの授業を肯定的に受け止めていることがわかる。中には「みんな私の思ったことと違うことを描いていたのでおもしろいと思った」など,他者受容につながる理由を述べている生徒もいた。
また,振り返り用紙の自由記述欄には,多くの生徒が「楽しかった,またやりたい」というような感想を述べているが,この他にも「友達をもっと別の方向から見ていきたい」「いろんな面で相手の個性を知った」「よい心のふれあいがもてたと思う」「班の人たちといつもよりしゃベれたのでよかった」「日ごろ話さない人とやってみたい」などの記述も数多く見られた。これらは授業のねらいでもあった「他者理解」や「他者にかかわりたい思い」の高まりを示すものである。自他を客観的にとらえ始める中学生ならではの内面への気づきを促すことができたと考えられる。
授業2 信頼する・される体験を通して,自己受容・他者受容の気持ちが高まる授業 授業1を受けて,より明確に肯定的な受け止め合いや感情の交流を味わえるように,身体的な接触のある次のような授業を行った。
1. 「フィーリングパートナー」と「ジャンケンゲーム」を取り入れたウォーミンダアップ
はじめに「フィーリンダパートナー」で2人組を作った。これは3つの二者択一の質間の答えが全て同じ相手を捜してペアになるという活動で,互いの共通の好みに気づきながら,ふだんとは異なる相手とベアを組むことができる。
さらに,互いの膝に手を乗せ合い,ジャンケンに勝った方が相手の手を叩く(負けたほうが相手のひざの上においた手を素早くのけると,勝った方は自分の膝を叩くことになる)というゲームを行って,身体的に触れ合うことに対する抵抗感の軽減と感情を表出しやすい雰囲気づくりをした。
2. 身体的な接触を通して,不安感や緊張感,思いやりの気持ちを伝え合う「トラストウォーク(信頼歩き)」
一人が目を閉じ,もう一人が手を取って案内するという活動である。案内される方は「相手を信じたいが,恐くて目をあけてしまいそうになる」という不安を,案内する生徒は「うまく案内できるだろうか」とか「恐くないようにゆっくり案内してあげよう」などの思いやりを,体の接触を通して伝え合う。
不安感を少しずつ軽減しながら「信頼する・される」体験ができるように,前半は声も使って案内してもよいこととし,後半は声を出さずに案内するよ