研究紀要第120号 「豊かな人間関係を育む指導援助に関する研究 第2年次」 -110/117page
うに指示した。また,慣れの程度に応じて,教室の中から廊下へと活動の範囲も広げた。
3. 気づきや心の動きを共有し合い,自分自身の気づきを明確化するシュアリング
それぞれのペアで感想を交換し合ってから全体でその様子を発表し合い,お互いの気持ちを共有できるようにした。教室に戻ったベアは元の席に座り,担任が指示する前から,自然発生的にシェアリングに入った。全体でのシェアリングでは,トラストウォーク中にふざけているように見えた男子生徒が,みんなの前で「こわかった」と本音を話す姿も見られた。
また,生徒一人一人がより深く自分自身と向き合えるように,振り返り用紙(資料20)を活用するとともに,時間の確保や進め方に留意した。
鉛筆の音が教室内に響き,全員がこの時間の自分の心の動きを真剣に振り返ると共に,自分自身や級友の新しい側面との出会いを反すうしている様子が感じられた。
<結果の考察>
目を閉じて案内される時,また,相手を案内する時,それぞれどんな気持ちだったかについて尋ねた結果は,次のとおりであった。
男女とも目を閉じて歩く時には,相手に頼りながらも多少の恐怖や不安,緊張感をもって活動していた様子がうかがえる。案内する時の不安感や緊張感については男女の差がかなり大きかった。活動中に,女子は身を任されることに対する不安や責任の大きさを感じていたのに対し,男子はゲームを楽しむような感覚で活動していたものと思われる。
自由記述欄に書かれていた感想や気づきは,単に「楽しかった,おもしろかった」だけでなく,目の見えない人の大変さへの気づきや気づかい,見えないことへの恐怖や不安,相手を信頼すること・されることの難しさなど,他者への思いや他者との関係についての内容のものが多かった。
(3) 実践の考察
1. めざす生徒の姿と事前・事後調査の比較から事前と事後の調査結果を比較したところ,それぞれの質問に対して「とてもそう思う」と「大体そう思う」とを合わせた生徒の割合は,次のように変化した。