研究紀要第120号 「豊かな人間関係を育む指導援助に関する研究 第2年次」 -111/117page

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自己や他者を肯定的にとらえている生徒や受容感を感じている生徒が増えている。また,この他にも「みんなのことを知りたい」が75.9%から82.8%に,「みんなと一緒に活動したい」が86.3%から89.7%に,「学級でのびのび生活している」も68.9%から82.8%と高まっており,学級の中で豊かな人間関係を発展させる上での土台づくりが進んだ。

 2. 視点をあてた生徒の様子から

自分の気待ちを表現することが苦手だったA男は,授業1では感想交換やシェアリングの時に笑顔で班のメンバーとのやりとりができていた。授業2の活動でも真剣な表情の中にも自然な笑顔が見られ,案内されている友達とふれ合いながら,信頼されることのここちよさを味わっているようだった。

事後調査の結果を見ると,「友達をもっと大切にしたい」が低くなっているものの,「一緒に活動したい」や「友人関係の深まり」などの項目が高まっている。他人の目を気にせずに自分のありのままの気持ちを表現することに対するA男自身の抵抗が小さくなっていることがうかがえる。

級友から離れていることの多かったB子は,授業1では最初のうちは生活班から若干離れて座っていたが,ゲームや感想交換の時に自分の思いを伝えたそうに隣の席の友達に近づこうとする様子が見られた。授業2でもペアを組んだ相手を気づかいながらも笑顔で活動に取り組んでいた。また,自分の気持ちをうまく言えないでいる相手に「あの時どんな気持ちだったの?」などとはたらきかける姿が見られた。事後調査の結果を見ると,「友達をもっと大切にしたい」と「友達と一緒にいることが楽しいと感じている」が高まっている。B子自身が新しい友達関係ができつつあることを感じ,そのうれしさを味わっているように思われる。

5 まとめ

指導援助の中で互いのよさを認めたりほめ合ったりする活動を設定し,肯定的な感情交流を促進したり,シェアリングの場でねらいとする感情の明確化,共有化を図ったりしてきた。このことが自己理解や他者理解を促進し,自己肯定感の形成に有効であると共に,他者とのかかわりを深めたいという思いが高まることにつながることが,各学年の実践により確かめられた。

《小学3年生》

○ 肯定的な自己理解,他者理解に視点をあて,他者の存在を感じ取らせながら,互いの理解を深め合えるよう,相互に肯定的な働きかけを多くする指導援助を行ったことにより,自己のよさに目を向け,それを受容できるようになった。このことにより,他者のよさにも目を向けられるようになり,自己理解,他者理解が深まったと考えられる。

さらに,これらのことが基盤となって自己内対話が促進され,自己を肯定的に受け止められるようになるとともに,他者をも肯定的に受け止められるようになってきた。その結果,一人一人の受容感が高まり,「知りたい」「共に活動したい」思いが促進された。

《小学5年生》

○ 他者理解に視点をあて,相互に他者への肯定的な働きかけを強化する指導援助を行ったことにより,他者理解の高まりと共に,他者との比較から自己をとらえやすくなった。また,このことが,自己内対話を活性化させることに結びつき,自己を肯定的な面ばかりでなく否定的な面からも受け止めることができるようになった。その結果,自己を客観的にとらえる自己理解や自己受容が高まってきた。さらに,この過程を通して「肯定的な他者受容」と「他者とかかわりたい思い」が促進された。

《中学2年生》

○ 自他に対する理解や受容が深まるように,構えのない感情交流ができる場面づくりを援助した。このことにより,お互いの感情を共有する経験をし,その過程を振り返る中で,自分自身や他者についての新たな気づきや理解が深まった。

○ 他者受容の高まりによって,「知りたい」「一緒


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