研究紀要第126号 「豊な人間関係をはぐくむ指導援助に関する研究」 -058/076page
る児童生徒が少なくない。
これらのことから,本研究では,基本的信頼感を土台とした「自己肯定感」「他者とのかかわりを深めたいという思い」「思いを伝える技能」の3つを人間関係をつくるカとおさえた。さらにこのカは,
1(○囲み)他者への関心を持つ
2(○囲み)他者にかかわりたいという思いを持つ
3(○囲み)他者に思いを伝える
4(○囲み)思いが受け入れられる
という他者とのかかわりの4つの段階を通して深められると考えた(資料1)。
(資料1)人間関係をつくる力の構図
1 「自己肯定感」について
(1)自己肯定感の概念規定
認知と感情が,人間の行動を規定する要因であることから,本研究では,自己肯定感を「知覚された自己についての肯定的な認知(自己理解)と,それを受け入れることによって生じる満足の感情(自己受容)から構成される」と概念規定し,「自己のありのままを受け入れるカ」と定義した(資料2)。
(2)自己肯定感形成のプロセス
自己理解は,自己の言動に対する他者からの評価や働きかけによって深められる。これは,同時に他者理解も深めることになることから,自己理解と他者理解は,並行して深まっていくものと考えられる。また,自己受容は,他者の肯定的な受容の態度が自己の嫌悪する側面を浄化させ,再び自己を見つめ直すことによって深められる。したがって自己肯定感の形成は,肯定的な自己理解と自己受容との関連,