研究紀要第126号 「豊な人間関係をはぐくむ指導援助に関する研究」 -059/076page

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そして他者とのかかわりにあわせて深められる「他者理解」「他者受容」の在り方がポイントとなる。
 これらのことから,自己肯定感は,肯定的な「自己理解」「自己受容」「他者理解」「他者受容」から構成されるととらえ,その形成のプロセスをモデル化し,研究の焦点化が図られるようにした(資料3)。

2 「他者とのかかわりを深めたいという思い」について

指導援助にあたっては,児童生徒の発達段階に即した現実的な思いを考慮して進めていく必要がある。そこで,各発達段階での「他者とのかかわりを深めたいという思い」を,次のようにとらえた。
<小学校低・中学年>
・ 仲良くなりたい,一緒に遊びたい
・ 一緒にいたい,自分のことを知ってほしい
<小学校高学年>
・ もっと知りたい,一緒に活動したい
<中学校以降>
・ 知りたい,一緒に活動したい,大切にしたい

3 「思いを伝える技能」について

 (資料4)の「行動」部分(どう行動するか?の具体的行動)のみを指すのではなく,行動に至るまでの「どのように行動したらよいか(適応的で有効な行動)」というコンピテンス(効果的に他者と相互作用する能カ)も含めてとらえる必要がある。つまり,これまでの知識や経験に基づいて,「どのような行動が適切か」また,「それを実行した場合,どう評価されるか」や,「実行できるか」の判断といった「認知」や「態度」の形成が,図に示す「行動」を左右するということである。
 このことから「思いを伝える技能」を,相手の立場や思いを考えながら(認知的側面),自分の思いを効果的に伝える(行動的側面)ことで,良好な関係をつくることができるカととらえた。

(資料4)「思いを伝える技能」のとらえ方
(資料4)「思いを伝える技能」のとらえ方
※態度…行動しようとする気持ち,心の準低ができあがった状態。

1年次には,人間関係をつくるカやその実態を,理論研究や児童生徒への調査を通して分析した結果,学級内での安心感や自己肯定感が高い児童生徒ほど,他者とかかわりたい思いが強く,聞く・話す・思いを伝えるといった技能も高いことが明らかになった。このことから,人間関係をつくるカを育成するためには,以下の指導援助が必要となる。

 ◇ まず,学級内での安心感が得られ,自己肯定感を高める指導援助が土台に必要である。
 ◇ その上で,他者とのかかわりを深めたいという思いと,その思いを伝えるための技能を高める指導援助が必要である。

III 研究の見通し

1 研究の仮説
 学級活動の時間を中心に,自己肯定感や他者とのかかわりを深めたいという思い,思いを伝 える技能を高めれば,人間関係をつくるカが高まり,豊かな人間関係がはぐくまれるであろう。

2 指導援助の基本的な考え

 学級の中での安心感は,感情を素直に表現させたり,他者とかかわろうとする気持ちを高めたりする。また,肯定的な感情交流は,安心感や受容感をもたらし他者とのかかわりを深めたいという能動的な思いを高めていく。さらに,人間の行動は,他者からの評価や自己認知による快・不快の感情や利益・


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