研究紀要第126号 「豊な人間関係をはぐくむ指導援助に関する研究」 -061/076page
現(言語,非言語)の仕方をさす。3 「思いを伝える技能」が高まり,態度化が促進される学習過程
段階 学 習 活 動・内 容 学 習 方 法 等 留 意 点 導入 安 心感を高めながら,感情の表出を図る ◇ ウォーミングアップ 展開 認知スキルの育成 1・ ある事柄や他者の言動を自己の知識や経験と結び付けながら,自己探求する
2・ 他者の情報を集めながら,特定の体験の中でどのようなことが起こっていたかを振り返る
3・ 2で内省したことや,教師,級友からのフィードバック情報を分析し,―般化する◇モデリング学習
・ ロ―ルプレイ
・ シェアリング
◇プレーンストーミング* 自分自身の在り方については,行動,感情,思考を重視する 行動スキルの育成 1・良好な人間関係づくりに必要な行動を計画する
2・実験的に試みる。.またそのことについて振り返る◇リハーサル学習
・ ロ―ルプレイ
・ シェアリング* 伝達役と受け手役の両者からのフィードバック
を通して,ねらいの強化を図る終末 ○ 活動を振り返り,自己を見つめ直す ◇シェアリング * 学んだことを実際場面で試みる
※ シェアリング…「振り返り」の意味で,活動の中での気づき感情を明確にしたり,教育したりしながらねらいを定着させる。4 指導援助の実際
<小学6年生>
(1)指導援助のねらい
事前調査の結果(資料5)から,次の点が問題として浮かび上がった。
「肯定的な他者受容」と「思い」,「心理的距離」が高い数値を示している反面,それが「友達関係の深まり」に反映していない。これは,「肯定的な他者理解」 (友達は,自分のいいところを知っている)と「技能」が低いことが影響していると考えられる。また,「いいと思う学級の雰囲気」の自由記述からは,「何でも話せる」「人の気持ちを考えてあげられる」ことを良好な友人関係ととらえている―方で,「欠点の自己受容」の自由記述からは,「すぐ怒ってしまう」「気になることを言ってしまう」など,他者を受け入れようとしながらも,感情をおさえて友だちと接したり,上手に自己表現できていなかったりする面もあることがわかった。これらのことから,良好な友人関係を築きたい思いは高いが,それを具現する自己表現の方法が十分に身に付いていないのではないかと考え,指導援助のねらいを次のようにした。
肯定的な他者理解や他者受容を中心に自己肯定感を高めたり,感情の安定を図ったりする日常の 指導を基盤に,相手の思いを受けとめる認知スキルと,自分の考えや感情を素直に表現できる行動 スキルを育成しながら,アサ―ティプなコミュ二ケ―ションスキルを身に付ける。
※ アサ―ティプ…単なる自己主張ではなく,相手の 立場を尊重しながら自分の感情や意見を素直に表現 すること(2)指導援助計画
授 業 ( 学 級 活 動 ) 等 日 常 の 指 導 授業1の事前活動 ◇「聞く」「話す」ことが両者の関係づくり,維持,向上,改善に大切なものであることをとらえられるようにする。
→基本的スキルの育成口 自己肯定感をはぐくむ指導援助
・ 互いを受け入れ合おうとする態度をはぐくむ班ノ―トの実施
口 感情の安定を図る指導援助
・ 心身のリラックスやストレスの軽減をめざしたリラクゼ―ションの実施
口 ロ―ルプレイのレディネスをめる指導援助
・ 自己表現・表出を促進する
ショ―トゲ―ムの実施授業1 ◎攻撃的,非主張的,アサ―ティプの3つの自己表現を知り,アサ―ティプな自己表現のよさをとらえることができるようにする。 授業2 ◎アサ―ティプな自己表現の仕方がわかり,日常生活の中に生かして他者とかかわろうとする意欲を高められるようにする。 授業2の事後活動 ◇学級・日常生活場面で,アサ―ティプな表現ができるようにする。