研究紀要第126号 「豊な人間関係をはぐくむ指導援助に関する研究」 -062/076page
(3)実 践
a 授業1の概要と考察
アサーティブな自己表現のよさが実感できる授業 ア 3つの自己表現の「モデリング」
ねらいを提示した後,「」書写の時間に小筆を忘れた人が,隣の人に借りる」という場面設定のもとに,教師と補助者のぺアによる3つの自己表現(攻撃的,非主張的,アサーティブ)のモデリングを行った。その際,ドラえもんのキャラクターを取り入れ,それぞれジャイアン・のび太・しずかちゃんという児童に分かりやすい3つのタイプで提示した。
モデリングの観察後の感想には,攻撃的な自己表現(ジャイアンタイプ)は,「なんだかガキ大将みたいだ」「こわい」「乱暴」「自分勝手」,非主張的な自己表現(のび太タイプ)は,「はっきりしない」「よわよわしい」「けじめがない」「何を言いたいのかわからない」,アサーティプな自己表現(しずかちゃんタイプ)は,「ていねいである」「はっきりしている」「しっかりしている」「やさしい」など,それぞれの特徴をとらえた発言がみられた。その発言を含め,言語的・非言語的の2つの観点から,3つのタイプの特徴を掲示資料を用いてまとめた。
イ 3つの自己表現の「口―ルプレイ」
ロ―ルプレイでの感情の表出が促進されるようなウォーミングアップ「ジャンケンパッチン」を行った。和やかな雰囲気の中で進められ,二人の間の感情の表出がゆっくりと図られていった。
次に,頼む役は台本のせりふをもとに3つのタイプのロ―ルプレイを行った。頼まれる役は,普段の自分で対応するようにし,どちらの役も体験できるようにした。男女のぺアということもあり,やや照れくささは感じられたが,言い直しをしながらも意欲的に取り組む姿が見られた。その後,3つの自己表現の違いによる気持ちの変化を明確にさせるため,「言ってみて」「言われてみて」どんな感じがしたかをぺアで振り返る場を設定した。
さらに,体験してみて気付いた点を振り返りカードに書く活動を設定した。カードには,「ジャイアンタイプは強引な言い方。みんなにきらわれそうな言い方だと思う」「のび太タイプは,聞こえないし,はっきりしないから,こっちがおこってしまいそうだった」「しずかちゃんタイプは,ていねいだしはっきりしていたので,気持ちよく聞けた」など,他の2つの自己表現と比べて,アサーティプな自己表現のよさをとらえている内容が多く見られた。ウ 3つの自己表現の「シェアリング」
全体の場でカードに記入した内容を発表し合った後,自分自身について振り返る場として再度カードに書く活動を設定した。そこには,「―つ―つの言葉や行動で傷つけないように気をつけたい」「これからは,はっきりして,相手のことも考えた話し方をしたいと思う」「ジャイアンの言い方は人をいやな気持ちにさせるので今度からやめようと思った」「いやな思いをさせないためにタイプを変えて言いたいと思った」など,相手のことを考えながら,これまでの自分の表現の仕方について振り返ったり,アサーティブな自己表現のよさをとらえて,それを日常に生かしていこうとする内容が多く見られた。