研究紀要第126号 「豊な人間関係をはぐくむ指導援助に関する研究」 -063/076page
<考 察>
振り返りカードによると「3つの自己表現の意味がわかった…78.1%」「まあまあわかった…21.9%」という結果になり,比較提示によるモデリングは,それぞれの表現の特徴を認知させるのに効果的であった。
ぺアによる3つの自己表現の口―ルプレイは,自己表現の違いによる自分や相手の気持ちの変化をとらえさせ,相手の気持ちを大切にした自己表現の必要性に気付かせることができた。
これまでの自分の自己表現について振り返る場を設定したことは,自己を見つめ,今後どうするかといった態度化へ向かわせるきっかけとなった。児童の感想にも「落ち着いて」「怒らないように」「はきはきと」などの言葉を具体的に挙げながら,「今度からは,しずかちゃんタイプのようにしたい」というように日常に生かしていこうとする気持ちを高めていたことがわかる。態度化を促進させながら,実際の行動化へつなげていくことが必要になってくる。
この授業に入る前には,「聞く」「話す」という基本的スキルの育成のために,「非言語的表現の大切さに気づかせる」ための伝言ゲーム,「受容的な聞き方の大切さをとらえさせる」ための「温かい・冷たい聞き方」のロ―ルプレイという2つの活動を設定した。非言語的な表現に着目させた伝言ゲームは,3つの自己表現の特徴をとらえる時に役立ち,「温かい・冷たい聞き方」のロールプレイは,ロールプレイのレディネスを高めるとともに,互いの表現の仕方やそのときの気持ちに着目させることに役立った。b 授業2の概要と考察
アサーティブな自己表現のよさが実感でき,態度化の促進をめざす授業 ア アサーティブな自己表現の仕方を考える
「約束の時間が過ぎても友達が来ないのでイライラして待っている」という事例を,担任がナレーションで提示した。
それを受けて,普段の自分だったらどうするかを考え,各自ワークシートに記入した。全体の場で数名の発表を行った後,授業1 の児童の感想と関連づけ,「しずかちゃんタイプの自己表現を考え,友達を相手に表現してみよう」というねらいをとらえさせた。
児童は,最初の自分の表現方法から,アサーティブな自己表現になるように考えワークシートに記入した。その際,どんな言葉や表情・身振りで表現するのかの視点で記入するようにした。
この後に,表現の仕方を―人で練習する言語リハーサルの時間を設定した。イ アサーテイプな自己表現の「リハーサル」
同性の3人組のグループで,各自が考えたアサーィブな表現方法を試み,振り返りを通して検討・修正するようにした。
進め方は,「進め方資料」に従い[リハーサル 1→振り返り 1→検討・修正→リハーサル 2 →振り返り2]とした。A児がアサーティプな自己表現,B児は普段の自分で対応,C児は観察という役を,分担表を参考に進めていった。「言ってみて」「言われてみて」どんな感じがしたかを振り返り,4つの視点(相手の気持ち・自分の気持ち・言語的表現・非言語的表現)で検討・修正した。その際,修正個所は消さないようにし,修正の足跡が残るようにした。また,3つの役は全て体験できるようにした。
同性同士3人のグループだったせいか,自然な感じで意欲的に取り組む姿が見られた。振り返りで友達の意見を取り入れながら検討・修正する際も,自分の初めの考えを生かしながら,友達の意見を受け入れる姿が見られた。