研究紀要第126号 「豊な人間関係をはぐくむ指導援助に関する研究」 -064/076page

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 ウ アサーテイプな自己表現の「シェアリング」

 リハーサルを通して,アサーティブな自己表現に近づけたかを振り返るとともに,その理由を考えてカードに記入した後,全体の場で発表し合った。その後,しずかちゃんタイプの自己表現を「日常生活でもやれそうか」や気付いたこと,感じたことを自由に書く活動を設定した。
 児童の感想には,アサーティブな自己表現に近づけたのは「自分の気持ちを言えたこと」「怒っていても相手のことや理由を考えて言えたこと」「相手の気持ちを考えるようになった」「表現と言葉の気持ちの入れ方」などの視点を考慮した成果を述べるものや,「今度は,日常生活の中でもやってみたい」と日常への行動化が促進されたものも見られた。

<考 察>

アサーティブな自己表現の仕方を各自が考え,3人組でリハーサルしたことによって,「日常生活でも使ってみて,普通に使えるようになりたい」「普段の生活で,相手が困らないような対応をしたい」など,アサーティブな自己表現のよさの実感を深めたと考えられる。特に,計画の段階においては,普段の自分の自己表現から,具体的にはどうすればアサーティブな自己表現に近づくのかを,視点(相手と自分,言語と非言語)に基づいて表現の仕方を考えさせたこと。もう1つは,各自が考えた表現の仕方を行動リハーサルした後,互いの感じ方をフィードバックし合いながら,どう行動・表現すれば,より適切な行動になるのか検討・修正を加えたことがあげられる。これらの手だてが,普段の生活の中にも取り入れていこうとする行動化に向けての意欲を高めたと考えられる。
 この授業後に,学級,日常生活などの実際場面での―層の態度化,行動化を図るために,アサーティブな表現方法についてリハーサルする活動を設定し,短学活の時間の中でいくつかの事例で実践した。簡単な事例提示を受けて,アサーテイブな自己表現の仕方を考え,行動リハーサルし,振り返るという授業2を簡略化したパターンで実施した。

c 日常の指導の概要と考察

互いを受け入れ合おうとする態度をはぐくみ,肯定的な他者理解・他者受容の促進をねらった班ノートの実践は,級友のよさの再発見やあまり親しくない級友との関係づくりに有効であった。特に,他者受容が深まり,友だちを受け入れる許容範囲の広がりが見られるようになった
授業での口ールプレイのレディネスを高めることをねらったショートゲームの実施により,学級の雰囲気がよくなり,自己表現の表出の促進が図られた。
このことは,恥ずかしさを感じながらも意欲的にロールプレイに取り組んだり,互いの気持ちを発表し合って振り返ったりする姿が見られ,授業のねらいの達成に有効であったと考えられる。

(4)指導援助の考察

 a 自己表現チェツクリスト(4件法;設問数10問)の事前・事後を比較すると,全項目にわたって0.2〜0.8ポイント,平均で0.5ポイントの上昇が見られた。認知面では,特に「自分の考えだけでなく,相手の考えを大切にして聞こうとする」「相手の気持ちを考えて,わかるように話そうとする」などの項目が0.5ポイント以上の上昇を示した。行動面では,「自分の考えを声の大きさや速さに注意して,はっきり話す」「話すときの表情や身ぶりを意識して話す」の項目で,0.7ポイント以上の上昇が見られた。

 b これまでの実践を振り返った児童の自由記述からも「こんなふうに言ったら,相手はどう思うかとよく考えるようになった」「他人のことを考えることが,どんなに大切かわかった」「話を熱心に聞くようになった」「相手のことを考えて話したり,行動したりできるようになってきた」「自分の意見を少しずつ言えるようになってきた」など,自己表現チェックリストの結果を裏付ける内容が多く見られ,認知スキルや行動スキルが向上した。

 c 児童―人―人が,「前の時より成長した」「考え方が変わった」「自分自身が変わった」「しずかちゃんタイプで話せる所がでてきて自分が大きく変わった。しずかちゃんタイプの言い方をして,とてもよかった」「新しい自分が生まれてきそうな気がす


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