研究紀要第126号 「豊な人間関係をはぐくむ指導援助に関する研究」 -065/076page

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る」など,自己表現の変化や成長と友達関係の向上に役に立つことを実感としてとらえることができた。
 以上のことから,モデリング学習が認知スキルを,リハーサル学習が行動スキルを育て,一連の指導援助のねらいに基づく実践は,アサーティブなコミュニケーションスキルを身に付ける上で有効であることが確かめられた。

<中学2年生>

(1)指導援助のねらい

事前調査の結果(資料6)から,次の点が問題として浮かび上がった。
 ○ 「肯定的な自己理解」と「肯定的な他者理解」の数値が他の項目より低く,自己肯定感はまだ十分に高まっていないこと。
 ○ 自己のよさを「友達と協力できる」「やさしく接している」「大切にしている」ととらえながらも,欠点を「嫌なことを断れない」「自分の意見が言えない」「人に調子を合わせてしまう」ととらえている生徒が多い。他者を受けとめる側面と,自己を表現・表出できずに他者の言動に左右されやすい側面との二面性をもっていること。

こうした問題の要因として次の点が考えられる。
 ○ 他者からの肯定的な働きかけが弱く,自分が受け止められているといった実感(体験)が希薄なため,自己を肯定的に受け止めることができず,自己表現をしにくくしているのではないか。
 ○ 自己表現や自己表出の技能が十分でないため,「他者とのかかわりを深めたいという思い」の高さや,「友達との心理的距離」の近さが実際の言動に結び付きにくいのではないか。

(資料6)事前調査結果
(資料6)事前調査結果

以上から,指導援助のねらいを次のようにした。

肯定的な自己理解や他者理解を深める日常の指導を基盤に,自己や他者の考えや気持ちを大 切にした自己表現のスキルを育成する。

(2)指導援助計画
授 業 ( 学 級 活 動 ) 等 日 常 の 指 導
授業1の事前活動 ◇ ジェスチャーによる感情を伝える活動を通して,自己表現への関心を高められるようにする。 口 肯定的な自己理解や他者理解を深める指導援助
・ 学級通信をもとに自他のよさを共有化とする教師からのフィードバック
口 自己表現・表出の技能を高める指導援助
・ 感じたことや考えたことを自由に表現する班ノート,6行日記の実施
・ 自己の感情を伝える活動の実施
授業1 ◎ 相手の気持ちを考えながらも,自分の気持ちを大切にした自己表現ができるようにする。
授業2の事前活動 ◇ ゲーム「ぴったし感々」を通して,自分の考えや感情を素直に伝えることができるようにする。
授業2 ◎ 相手の気持ちを大切にしながら,自分の気持ちや状況を伝える自己表現ができるようにする。

(3)実 践

a 授業1 の概要と考察

相手の気持ちを考えながらも,自分の気持ちを大切にする自己表現の促進をめざす授業

ア 友だちの誘いを断る「モデリング」

 感情表出を図るウォ―ミングアップ(「フィ―リングパ―トナ―」「ジャンケンゲ―ム」)を実施後,本時の中心活動に入った。
 「モデリング」では,担任と補助教師がぺアになって口―ルプレイを行った。「宿題を忘れた二人」という設定で,答えを丸写ししようと誘う生徒(担任)とそれを断り自カでやろうとする生徒(補助教


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