研究紀要第126号 「豊な人間関係をはぐくむ指導援助に関する研究」 -067/076page

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 b 授業2の概要と考察

相手の気持ちを大切にしながら,自分の気持ちや状況を伝える自己表現の促進をめざす授業

 ア 自分の気持ちや状況を伝える自己表現の「モデリング」

 男女混合の4人(または5)グループで感情交流を図るウォーミングアップ(「音当てゲーム」)を行った後,本時の中心活動に入った。
 2人の補助者によるモデリングでは,「補助者Aの大切にしている品物(人気歌手のCD)を補助者Bが貸してと頼む」という設定のもと,補助者AがBの気持ちを考えずに断るだけの言い方(1回目)と,Bの気持ちを考えながら自分の気持ちや状況等を分かりやすく伝えて断る言い方(2回目)を対照的に演示した。
 演示後の振り返りでは,1回目の演示に対して,「互いに嫌な感じ」「歯切れが悪い」「意地悪な感じ」という感想が出された。―方2回目に対しては「理由が話されていてわかりやすい」「さわやかな感じ」「顔の表情もやさしい」「誠実な感じ」という感想が出された。担任は,態度・表情・言い方等の視点に沿って生徒の感想を整理した。

自己表現スキルの視点
[自己表現スキルの視点]

 イ 自分の気持ちや状況をわかりやすく伝えて断る「口―ルプレイ」

続いて場面設定,ルール及び進め方が確認され,グループ活動へと移った。グループごとに,頼む役・断る役・観察役を決定すると,断る役の生徒がメンバーに「大切にしている品物」を伝え,頼む役・断る役それぞれが,どのように対応するかを考えた。担任は机間指導で,生徒の考えや取り組みを支持したり,なかなか考えのまとまらない生徒には具体的なアドバイスを与えたりした。
1回目の口ールプレイでは,「〜貸してもらえない?」と頼む相手に対して「ごめんね,〜」「悪いけど〜」と断る生徒,貸せない理由を相手に伝えて断る生徒,ストレートに「だめ」と言ってしまう生徒などが見られた。終了後は,「もっとやさしい言い方をしてみてはどうか」「表情にも気をつけてはどうか」「貸せない理由だけでなく,相手を思いやる言い方はできないか」など,2回目のロ―ルプレイに向けた具体的な話し合いが行われた。
2回目のロールプレイでは,断る役の生徒が1回目のときよりも相手に対する気持ちを言葉や表情にあらわして,ていねいに伝えている姿が見られた。

 ウ 自分の気持ちや状況をわかりやすく伝える自己表現の「シェアリング」

断る役の生徒からは,「理由を言って断ることができた。相手にも納得してもらえて自分としてはまあまあ。表情もあわせて伝えるのは難しいと感じた」「しつこく迫られて思わず嫌だという思いが表情や態度に出てしまった。もっと言葉で伝えるべきであった」などの感想が出された。また,誘う役や観察役の生徒からは,「同じ(ごめんね)でも,2回目の方が気持ちがこもっていて,断られたけどそんなに嫌じゃなかった」という感想が出された。

ロールプレイ後のグループでのシェアリング
[ロールプレイ後のグループでのシェアリング]


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