研究紀要第134号さまざまな調査を基にして「個に応じた学習指導」を実践するための基礎研究- 022/069page
B班の研究テーマ
〜子どもたちの「確かな学力の向上」を目指し,「個に応じたきめ細かな学習指導」を実践するための基礎研究〜
I B班の研究の趣旨
全国的に学力の低下が懸念されている現在,本県においても「学力の向上」が重要な教育課題の一つになっている。学力の向上のためには,子どもの学力到達度を客観的かつ継続的に把握する学力調査が不可欠である。国においても本県においてもこのための学力調査が計画されている。
これまで国語・数学・英語を中心に実施した学力調査は,集団の平均値に基づく調査・分析がほとんどであった。しかしながら,「学習のつまずき」や「学習への取り組み方」は,子供たち一人一人の学力到達度や学習スタイルなどによって大きく異なると考えられる。このことを「学力到達度試験」や「国語・数学・英語の学習調査」,「学習基本調査」を実施して具体的・数量的に検証することとした。さらに,それを基に,各教科における基礎的・基本的な学力の向上を図るための調査・分析の方法や学習指導の在り方について研究し,本県の子どもたちの学力の向上に資することとした。
また,「IEA国際数学・理科教育調査」や「OECD生徒の学習到達度調査」の結果によれば,我が国の子供たちは各教科の基礎的・基本的な知識の習熟レベルは国際的に見てトップクラスであるにもかかわらず,実際の問題解決場面における問題解決能力は必ずしも高いとは言えないことが明らかになった。そこで,それぞれの教科における基礎的・基本的な学力の向上にとどまらず,問題解決場面で生きて働く知識を身に付けさせるための学習指導の在り方についても考察することとした。
U B班の研究の概要
1 これまでの学力到達度調査結果の検証
(1) はじめに
これまでの学力到達度調査結果を検証し,各教科の基礎的・基本的な学力の向上を図るための調査・分析の方法と学習指導の在り方について研究した。
本教育センターにおいても,平成7年度と平成9年度に「教研式・全国標準診断的学力検査(NRT)」(以下これをNRTと呼ぶ)を実施し,本県の児童生徒の学力の実態の把握に努め,学力到達度状況の全国における位置付けや成績分布の特徴などを明らかにした。平成11年度にはその成果を「福島県の児童生徒の学力の到達状況に基づく授業改善の研究」にまとめた。また,この成果は,学力の向上を図るための指導の要点をまとめた「サクシード」等にも生かされ,本県児童生徒の学力の向上のための学習指導改善に役立てられた。
このような成果を踏まえながら,さらに数学(一次関数,規則性の発見,平方根)と国語(論理的文章の読解力)について,学力到達度ごとに「学習のつまずき」を細かく調査・分析するために,数学と国語の「学力到達度試験」を実施した。さらに学習調査(数学,国語,英語)によって,学習に対する姿勢についても学力到達度ごとに調査・分析した。これらの調査・分析をとおして,個に応じたきめ細かな学習指導改善のための学力調査の方法や結果の分析方法について研究した。またそれを基に,学力の向上のための学習指導の在り方についても研究した。
(2) 調査対象母集団とNRT(2年生の3月に受験)成績による学力層の設定
○ 調査対象 本県の二地区の二つの中学校の3年生437名
この437名のNRT国語,数学,英語,国数英3教科総合それぞれの試験結果を基に,全体をA層,B層,C層,D層,E層の5つの学力層に分けた。調査・分析はこの学力層ごとに行った。
NRT成績を基にした学力層の設定
国 語 数 学 英 語 3教科総合A層(偏差値63〜) 4139
58
31
B層(偏差値55〜62) 124
119 116 129C層(偏差値48〜54) 114 106 99 118D層(偏差値40〜47) 104 75 94 96E層(偏差値〜39) 54 98 70 63総 人 数 437 437 437 437(3) 「学力到達度試験」結果の分析
成7年度と平成9年度に実施した学力到達度調