研究紀要第134号さまざまな調査を基にして「個に応じた学習指導」を実践するための基礎研究- 023/069page

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査結果の分析によって,本県の中学生の平均正解率が全国と比べて特に劣っていることが明らかになった「数学」と「国語」の学習項目の中から幾つかの項目を選び出し,それらの項目についての学力到達度試験を新たに作成し,学力到達度ごとにそれらの項目のどの段階で「つまずく」のかを確認した。

 その結果,「つまずく」段階は学力到達度によって異なり,これまでのような平均正解率を基にした学力の分析では,生徒の学力の実態を把握できないどころか,本当の生徒の学力の実態を見失ってしまう危険性があることが確認できた。これまでの学力到達度調査で,平均正解率が低かった学習項目について,改めて学力到達度ごとに学力到達度の実態を把握する必要があると考える。

 また,先の学力到達度試験問題(数学)の正解率を中学校の数学の教員に予測してもらった。その結果,形式的な計算問題についての教師の予想正解率は,適切なものであったが,定義や概念の把握に関する問題や,獲得した知識を実際の問題解決場面で使う問題の正解率は,どの学力層においても教師の予想正解率を大きく下回った。

 このことから推測すれば,教師は知識の意味や学んでいる学習の意義を伝えることを大切にした学習指導を心がけているつもりであっても,実際はそのことが生徒に伝わっていないことが分かる。この結果は,「学習は大切であると思うが,学習の意義や学習の楽しさを感じることができない」ために学習から遠ざかっていく生徒が多いという問題点を裏付けるものとも言える。知識の意味について考察し,知識の構造化を図り,解決した問題を振り返って,その問題を解決するためのスキーマ(注釈1)を明確にするなどの学習を,教師は常に心がけることが必要である。

 論理的文章の読解力についての学力到達度試験結果を見ると,部分の精読・部分の関係把握や文章全体の構成把握に関する正解率は,E層を除くどの学力層においても比較的高い。しかしながら,文章全体の大意を把握する問題の正解率は,どの学力層でも低い。この結果は「OECD生徒の学力到達度調査」結果と一致する。

 同じようなことが数学でも言える。一連のまとまりのある問題群の解決に際して,A層の生徒の多くは,問題全体の出題意図を把握し,各小問の関連を理解しながら問題を解こうとするが,B層から下の生徒はそのような態度が見られない。

 また次の研究項目「問題解決能力の育成のための基礎研究」で実施した「総合的・発展的な学力試験」(p29参照)の[大問1]は,数学的な論理的文章の読解力を測る問題であった。文章量も少なく,数学的には平易な問題であるにもかかわらず,どの学力層においても,[大問1]の各小問の平均正解率は低かった。

 特に,問題文全体の要旨を把握して解く最後の小問の平均正解率は,どの学力層においても教師の予想正解率を大きく下回った。このことからも分かるように,学力の向上を図るためには,すべての学習の基礎である論理的な文章の読解力の育成が欠かせない。また,論理的な文章の読解力は,予習や自ら進んで学習するための基礎学力でもある。論理的な文章の読解力の不足は,予習を前提とする高校での学習のつまずきの大きな要因となる。

(注釈1)スキーマ…ある事柄について持っているひとかたまりの知識

(4) 「学習調査」結果の分析

 学習調査は,「塾を考慮した学習時間」,「学習に関する意義の捉え方」,「問題への対処の仕方」の3つの観点で行った。その結果の幾つかを紹介する。

 数学では塾に通う割合が,B,C層よりA層が大きく,A層の54%の生徒が塾に通っている。また,学校の授業についていくのが困難であると思われるE層でも,塾に通う割合が37%と大きく,D層の割合を超えている。

 しかしながら,「家庭における学校の学習のための勉強」に関する数学の調査では,「ほぼ毎日」と「宿題があるとき」を合わせた割合は,逆に,B,C層よりもA層が小さく,D層よりもE層が小さい。通塾率と家庭学習時間についてのこれら二つのことから判断すると,学力最上位のA層と最下位のE層は,学校の数学の学習には,満足していない傾向があると思われる。すべての学力層の生徒たちの学習二ーズを満足することができる学習指導スタイルを,検討する必要がある。

 どの教科においても,「役に立つと感じる」などの


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