研究紀要第134号さまざまな調査を基にして「個に応じた学習指導」を実践するための基礎研究- 027/069page
3 「学習基礎調査」結果の分析を基にした学習指導の改善
(1) はじめに
学力』を構成する「学ぼうとする力」,「学ぶ力」と「学んで得た力」には互いに相関関係があると考えられる。しかしながら,個々の児童生徒を見るとき,必ずしも学習意欲・学習スタイル等と諸テストの成績が一致しない場合があることも事実である。
そこで今回,「学ぼうとする力」,「学ぶ力」を新たに作成した「学習基礎調査」から,また「学んで得た力」を「NRT」から求め,相互の力がどのように関係しているかを改めて考察し,更に相互の力を組み合わせた視点からの個に応じた学習指導の参考データを提示した。(2) 「学習基礎調査」のねらいと調査内容
本調査は,「学ぼうとする力」,「学ぶ力」を客観的に捉えることをねらいとしている。調査内容は,5領域50項目で,詳細は以下に示す通りである。
(@起床の自立性A朝食の摂取B校外での学習時間Cテレビ視聴時間D睡眠時間E趣味の時間F校外での運動時間G家族との会話H家事分担I授業への準備)
T「生活習慣」について
(@自己理解度A自己肯定感B将来の夢C努力への価値観D他者からの肯定感E他者への肯定感F自己表現Gストレス度Hストレス防止等I生活の充足感)
U「自分自身」について
(@学習意義・目的感A予習B授業での集中C授業での発言D苦手への挑戦E復習F励まし等を受ける度合いG叱責等を受ける度合いH学習の楽しさI発展的な学習への意欲)
V「学習への意欲・姿勢」について
(@学習計画の立案A校外の学習の場の活用B社会の出来事への興昧C校外の体験活動への参加D自力の解決方法E質問による解決方法F教科書・ノートの活用G参考書等の活用Hコンピュータの活用I読書・新聞読み)
W「学習スタイル」について
(@学校生活の自己評価A学級生活の自己評価B学校内で規則の守られる度合いC学級の学習雰囲気D授業の楽しさE家庭生活の自己評価F家庭での心身のくつろぎ具合G家族との進路の話し合いH家庭での学習支援者の存在I長期休業中の体験学習)
X「学習環境」について (3) 「学習基礎調査」の分析方法
調査結果は,まず調査対象全員に対して,50項目のそれぞれの選択肢A―B―C―Dを,A…+2点,B…+1点,C…−1点,D…−2点に換算し,+100点〜−100点で採点した。
次に調査対象全員を,50調査項目中、+の得点の項目が多いH層,+と−の得点の項目がほぼ同等のN層,−の得点の項目が多いL層の3つの層に分けた。
H層 +31点〜+100点 95人 N層 −30点〜+30点 284人 L層 −100点〜−31点 56人更に「学ぼうとする力」,「学ぶ力」と「学んで得た力」の結果を組み合わせ,調査対象全員を「学習基礎調査」によるH,N,Lの3つの層と「NRT(国,数,英の3教科合計)」によるA〜Eの5つの学力層(A〜Eの順で高い)とをクロスさせたA―H〜E―Lの15グループに分けた。
A―H 9人 A―N 20人 A―L 2人 B―H 31人 B―N 89人 B―L 7人 C―H 27人 C―N 81人 C―L 10人 D―H 21人 D―N 59人 D―L 16人 E―H 6人 E―N 32人 E―L 18人上記の手順を踏んだ上で,「学ぼうとする力」,「学ぶ力」と「学んで得た力」の関係を「学習基礎調査」と「NRT」の結果の相互比率の分析から考察した。
更に15グループの特性傾向を分析し,個に応じた学習指導の参考データを求めた。(4) 「学習基礎調査」の分析結果
@ 「NRT」によるA〜Eの5つの学力層での「学習基礎調査」によるH,N,Lの3つの層の比率
H層 N層 L層A層における比率 29% 65% 6%B層における比率 24% 70% 6%C層における比率 24% 68% 8%D層における比率 22% 61% 17%E層における比率 11% 55% 34%