研究紀要第134号さまざまな調査を基にして「個に応じた学習指導」を実践するための基礎研究- 028/069page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

 上表からは,「学んで得た力」と「学ぼうとする力」,「学ぶ力」の間には,ごく緩やかな相関関係が見られた(E層では相関関係が他層に比べ強い)が,「学んで得た力」が高い生徒は「学ぼうとする力」,「学ぶ力」も一般的に高いと断定するほどの優位性は認められなかった。

A 15グループの特性傾向
 「学習基礎調査」と「NRT」をクロスさせた15グループは,分析の結果,次の特性傾向が見られた。

◆A―Hグループ〔※前述のデータを40人学級に置き換えた場合の学級中の各グループの生徒割合:0.8人〕「授業での発表・発言」をよく行い「自力での解決方法」を身に付けているが,「校外での学習時間」が短く,「学習計画の立案」も不十分である。

◆A―Nグループ〔同上:1.9人〕
「校外での学習時間」は多寡に偏らず適度であり「質問による解決方法」「参考書等の活用」等も身に付いているが,「将来の夢」を持てていない。

◆A―Lグループ〔同上:0.2人〕
「ストレス度」が高く「ストレス防止」の手段も持てていないため,「生活の充足感」が低い。

◆B―Hグループ〔同上:2.9人〕
「学習の楽しさ」は感じているが,「睡眠時間」「授業への準備」等の基本的な生活・学習習慣が定着しておらず,また「自己表現」の力等が不足している。

◆B―Nグループ〔同上:8.2人〕
「苦手への挑戦」の意欲や「復習」の学習姿勢は身に付いているが,「校外での学習時間」「他者からの肯定感」等の少なさが目立つ。

◆B―Lグループ〔同上:0.7人〕
L群内では相対的には「励ましを受ける度合」が高く「ストレス度」も低いが,「自己理解度」「教科書・ノートの活用」等が不十分である。

◆C―Hグループ〔同上:2.5人〕
「校外での学習時間」は適度であり「参考書等の活用」にも努めているが,「励まし等を受ける度合い」「長期休業中の体験的学習」等が少ない。

◆C―Nグループ〔同上:7.6人〕
「参考書等の活用」は見られるが,「校外での学習時間」は短く逆に「テレビの視聴時間」は長く,また「苦手への挑戦」等の姿勢が不足している。

◆C―Lグループ〔同上:0.9人〕
L群内では相対的には「他者からの肯定感」「授業の楽しさ」を感じており,「授業での集中」「教科書・ノートの活用」にも比較的努めている。

◆D―Hグループ〔同上:2.0人〕
「学習計画の立案」を実行しており,「励ましを受ける度合い」も高いが,「テレビの視聴時間」「授業での発言・発表」「読書」等で努力の余地がある。

◆D―Nグループ〔同上:5.5人〕
「家庭での心身のくつろぎ具合」は高いが,「テレビの視聴時間」の長さが目立ち,「苦手への挑戦」「質問する解決方法」等の姿勢が不足している。

◆D―Lグループ〔同上:1.5人〕
「家族との会話」が多く「家庭での心身のくつろぎ具合」も高いが,「授業の楽しさ」等は感じておらず,学校場面での「ストレス度」が高い。

◆E―Hグループ〔同上:0.6人〕
「ストレス度」は低いが,「テレビの視聴時間」の短縮や「授業での発言・発表」「自力での解決方法」「参考書等の活用」姿勢等で努力の余地がある。

◆E―Nグループ〔同上:3.0人〕
「将来の夢」を持っているが,「他者からの肯定感」「家族との進路の話し合い」が少なく,「校外での学習時間」「復習」等も不足している。

◆E―Lグループ〔同上:1.7人〕
「将来の夢」は持っているが,「家族との会話」は少なく「家庭での心身のくつろぎ具合」も低い。また,学校では「授業での集中」「授業の楽しさ」を持てておらず「叱責等を受ける度合い」が高い。

 「学ぼうとする力」,「学ぶ力」と「学んで得た力」とは相乗的に作用し,『学力』として高まっていくことが期待される。しかし,個人における相互の力の組み合わせは多様であり,単に諸テストの平均点(「学んで得た力」)のみを基準にした学習指導では,個に応じた『学力』の向上を期待することは難しい。
 本調査で行った15グループの特性傾向の分析から得られたデータが,多少でも「個に応じた学習指導」の参考となれば幸いである。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。
福島県教育センターの許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。