研究紀要第134号さまざまな調査を基にして「個に応じた学習指導」を実践するための基礎研究- 029/069page
V 今後の課題
これまでに本県でも,つまずきやすいとされる学習項目について,その解消に向けた研究が数多くなされ,その研究成果を基に,学力の向上が図られた。しかしながら,分析自体が平均正解率を基にしたものであったため,つまずきの解消に向けた指導工夫が,平均的な学力層に対してのみ有効なものになっていることが多かったのではないかと考える。これまで実施した学力到達度調査で平均正解率の低かった学習項目について,改めて学力到達度調査を行い,平均ではなく学力到達度ごとに,それらの学力到達度の実態を把握する必要があると考える。さらにそれを基に,学力到達度に応じた指導の工夫についての実践事例を積み重ねる必要があると考える。
理由は何であれ,「学習は大切と考え,学習内容を理解したい」と望む生徒は,3教科すべてのどの学力層でも,95%以上にのぽることが明らかになった。このような「学習に対する肯定的な意識」を具体的な「学習行動」に移すための指導の在り方を,学力到達度ごと各教科ごとに,具体的にまとめることが必要であると考える。
今求められている問題解決能力を育成するためには,できる限りそのような能力を客観的に測定する必要がある。PISAの問題等を参考にしながら,そのような能力を測定するための試験問題の作成について,研究を進める必要があると考える。
<参考・引用文献等>
1) OECD生徒の学習到達度調査(PISA) 2000年調査国際結果報告書 (国立教育政策研究所2002年)
2) 大学入試センター研究報告 「学生は高校で何を学んでくるか」(大学入試センター研究開発部 2000年)
3) 秋山仁講演記録「21世紀に求められる学力とは」 (内外経済情勢懇談会での講演)(東海大学教育研究所2001年)
4) 課題解決力の育成を目指す教育 (ベネッセ文教総研 2001年)
5) 高校生の自己概念と学力評価 (ベネッセ文教総研 2001年)
6) 第3回学習基本調査報告書 (小学校編,中学校編,高等学校編)(ベネッセ教育研究所 2002年)
7) 診断的学力検査 実施と利用の手引き (図書文化)
8〉 学校教育の心理学 市川伸一・無藤隆著 (学文社 2001年)
9) 心理学から学習をみなおす 市川伸一著 (岩波書店 2001年)
10) 開かれた学びへの出発 市川伸一著 (金子書房 2002年)
11) 「学ぶ力」を伸ばすカリキュラム開発 (柴田義松) 授業研究21 vol.40 2002年2月号
12) 学力を問い直す 佐藤学著 (岩波書店 2002年)
13) 数学的活動と反省的経験 根本博著 (東洋館出版 1999年)
14) 到達度評価の研究 橋本重治著 (図書文化 2002年)
15) 続・到達度評価の研究 橋本重治著 (図書文化 2002年)
総合的・発展的な学力試験1 次の文章を読んで,後の問題に答えなさい。
一次方程式2x−3=1------@
を解くと x=となる。すなわち,方程式@が成り立つような未知数xはただ一つの値に定まる。もしxを変数として自由に動かすならば,2x−3の値もそれに応じていろいろな値をとる。その関係はy=2x−3------A という式によって表され,yはxの一次関数となる。
Aにおいて,x=4を代入すれば,y=となる。このことを図で表したのが,(図1)である。一方,Aにおいて,yに1を代入すれば方程式@となる。したがって,方程式@を解いて未知数xを求めることを図で表せば,(図2)のようになる。このように方程式@を解くことは,関数Aが表すグラフ上で,y座標が1となる点のx座標を求めることにほかならない。
問題
1 文中の,に適切な数値を入れなさい。
2 方程式@のxと一次関数Aのxを表す言葉を,上の文中からそれぞれ抜き出しなさい。
3 文中のの内容を(図2)を使って説明したい。(図1)にならって,解答用紙の(図2)を完成しなさい。
2 次のT〜Vの問いに答えなさい。
T<列車の速さの変化について>
次の文章を読んで,後の問題に答えなさい。
下の図はある列車が,A駅を出発し,10分後にB地点を通過し,50分後にC地点を通過して,60分後にD駅に到着するまでの列車の速さの変化を,グラフに表したものである。
ただし,A駅を出発してからの時間を横軸に,列車の速さを縦軸にとる。