長期研究員の研究 研究紀要第137号科学的な思考を促す教材の開発とその授業実践-053/069page
(2) 興味・関心
事前・事後調査の比較によると興味・関心の面では,次の項目で変容が見られた。この結果から,本実践は生徒の興味・関心を高めたと言える。
(3) 科学的な思考
事前・事後調査の比較によると,科学的な思考の面では,次の項目で変容が見られた。この結果から本実践により科学的な思考が促されたことがわかる。
(4) コンセプトマップの比較
事前にエネルギーについて知っているキーワードとその関連付けをコンセプトマップとして書かせたところ,ほとんどの生徒が「電気」を挙げた。運動エネルギーや位置エネルギーに関するキーワードはあまり見られず,各キーワード間の関連付けも明確なものが少なかった。しかし,事後に書かせたコンセプトマップでは次の図のように,エネルギーに関するキーワードが多く見られるようになるなど大きく変容した。
「エネルギー」に関するキーワードの数と各キーワード間で成立した適切な関連付けについて,事前と事後を比較した結果は次の通りである。
調査した項目 事前 事後エネルギーに関するキーワード 6.4個 10.6個キーワード間で成立した適切な関連付け 4.3個 6.9個キーワード間の関連付けでは,内容も明確なものが多くなり具体的な記述が多く見られるようになった。この生徒のコンセプトマップを例にとれば,事前には「火力発電所」という表記が,事後では「火力発電所では、熱エネルギーを利用している。発電機を回して電気エネルギーを得ている」と明確な内容に変容している。
以上、(3)と(4)の結果から,科学的な思考が促され,基礎・基本の定着が図れたことが確認できる。
V まとめと課題
○ 水力発電装置等の教材は,生徒の興味・関心を高めることができた。
○ 生徒が条件を自分で工夫し,実験を行うことができる教材と,自分の言葉で実験について説明する機会を設けたこと
は,論理的に考えたり,関連付けて考えたりするなどの科学的な思考を促し,基礎・基本の定着につながった。
○ 学習内容を日常生活と関連付け,日常生活に役立てるためのポイントを授業の中でどう扱っていくかが今後の課題と言える。
(授業実践の詳細は,福島大学研究集録:福島大学教育学部附属中学校学校公開における菅野重徳教官の実践参照)