長期研究員の研究 研究紀要第137号科学的な思考を促す教材の開発とその授業実践-052/069page
科学的な思考を促す教材の開発とその授業実践
−エネルギーに関する観察・実験を通して−長期研究員 松 本 一 宏
T 研究の趣旨
昨年度まで,「光と音」,「電流」の単元において,生徒が条件を自分で工夫し,実験を行うことができる教材の開発と,授業におけるその活用方法について研究を進めてきた。本年度は,学習指導要領でエネルギー関連の内容が重視されたことを踏まえて,エネルギーに関する教材の開発と工夫を行った。これらの教材を用いて実験を進め,自分の言葉で実験について説明できるようにすれば,科学的な思考※をより促し,基礎・基本の定着を図ることができると考え研究を進めた。
※平成12年度研究紀要(第30集)【福島県教育センター】を参照
U 研究の概要
1 単元・対象
○ 「エネルギー」 (4時間)
○ 中学校3年4 クラス160名2 実践した授業について
(1) 検証授業@エネルギーの変換 (1時間)
高い位置に持ち上げた水を落下させて発電する「水力発電装置」を用いて,位置エネルギーの存在を認識させるとともに,位置エネルギーから電気エネルギーへの変換を実感できるようにした。
水力発電装置(発電部に光電池用モーターを用いた。回転部にはペットボトルを切り取った小片を使用)(2) 検証授業Aいろいろなエネルギー(3時間)
エネルギー変換を確認できる様々な教材を用いた実験をワークショップ形式で行った。最初に実験方法を説明し,その後で各グループに分かれ,用意した教材をすべて用いて実験を行わせた。その際,自分の言葉で実験について説明できるよう働きかけた。
実際の授業では,予想した以上に生徒たちが自発的に教え合い,事象や結果を確認するなど良い相互啓発が行われた。(3) 検証授業Aで用いた教材
○ 検証授業Aで用いた他の教材
エネルギー変換 取り入れた教材運動→熱 水筒内の水を攪拌し温度を上げる 運動→電気→熱 手回し発電機で鉛筆の芯を燃やす 光→熱→運動 ラジオメーターを懐中電灯で回す 音→電気→光→電気→音 光通信装置で音声を送る 3 結果と考察
(1) 取り入れた教材について
検証授業@で用いた水力発電装置についての感想等から主体的に実験に取り組めたことが伺える。
また,事後調査において,9割以上の生徒が「授業で用いた教材は学習に役立った」と答えた。