長期研究員の研究 研究紀要第140号色彩感覚を豊かにするための授業の工夫-059/069page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

表1 色相についての色とことばの関係表
熱い
情熱
甘み
笑い
明快
希望
安心
自然
広大
冷静
高貴
神秘

表2 卜ーンについての色とことばの関係表
低彩度・高明度
高彩度・高明度
優しい・淡い
明るい・楽しい
低彩度・低明度
高彩度・低明度
地味・丈夫
濃い・深い

B 「制作」における工夫
 色の選択について意欲的に考える場面や,色彩の効果について実感を深める場面が数多くもてるよう,「制作」の学習活動を,「顔のデザイン(図1)」「背景のデザイン(図2)」「キャッチコピーのデザイン」「細部のデザイン」「台紙への貼り付け(図3)」に分け,それぞれの活動において,色の選択について意欲的に考えたり,色彩の効果について実感を深めたりするようにする計画を立てた。なお,「細部のデザイン」については,進度差への配慮から,進度の速い生徒への課題とするようにした。

「制作」における工夫

C 「鑑賞」における工夫
 全生徒の作品を鑑賞し,よさを認め合う活動をすることによって,達成感を抱かせ,色彩感覚に自信をもつことができるように計画した。

 

V 研究のまとめ

 検証授業の後,色彩感覚の自信について,自信が「ない」「あまりない」と答えた生徒は4割弱という結果となり,色彩感覚に自信をもてない生徒を約半数まで減らすことができた。このことから,検証授業は,色彩感覚を豊かにするために有効であったと言える。また考察の結果,研究の成果および今後の課題として,次の点が考えられた。

1 成果

(1) 「切り絵」を活用することの有効性
 「満足できた点」として最も多かった項目は,「時間内に完成できた」(100%)であった。これは,「切り絵」を活用したことによって,制作最後の1時間を「台紙への貼り付け」にすることができたためである。このことから,「切り絵」を活用することの有効性を明らかにすることができた。

(2) 「自分の顔」をモチーフにすることの有効性
 「満足できた点」として多かった他の項目は,「主題を自分なりに表現できた」(73%)や,「キャッチコピーに満足できた」(67%)であった。これは,「自分の顔」をモチーフとしたため,主題の表現や主題をもとにしたキャッチコピーについて真剣に考えたためと,とらえることができた。このことから,「自分の顔」をモチーフとすることの有効性を明らかにすることができた。

2 今後の課題

(1) 形や構成についての課題
 「不満と感じる点」として最も多かった項目は,「形や構成に満足できなかった」(37%)であった。このことから,今後は「形や構成につまずく生徒への効果的な支援のあり方」を明らかにする必要がある。
具体的には,「形とことばの関係」や「構成とことばの関係」,およびそれらを理解させるための手立てを明らかにしたいと考えている。

(2) 鑑賞についての課題
 鑑賞の時間における生徒の様子を観察した結果,多くの生徒が,色の効果について分析しようとする前に,キャッチコピーや主題に関心をもち,その後,次の生徒作品への鑑賞を始めることが見てとれた。
このことから,今後の鑑賞の時間においては,色の効果について注目するよう明確に指示したり,まとめの時間に色の効果について全体で共有化したりするなど,鑑賞の時間の効果的な学習指導について明らかにする必要がある。

<参考・引用文献>
1) 色彩学 千々岩英彰著(福村出版,1985年)


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。
福島県教育センターの許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。