長期研究員の研究 研究紀要第142号教育相談(1)-062/069page

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「人とかかわる技能」を高める指導援助に関する研究
−小学校低学年ヘの指導援助の在り方−

長期研究員 岩 下  聡

 

T 研究の趣旨

 私たち教師は,日々の学習指導とともに,児童生徒の良好な人間関係をどのように築いていくかで頭を悩ませることが多い。特に近年,対人関係能力の未熟な児童生徒の増加を語る教師も多い。この対人関係能力は,以前は家庭や社会生活の中で自然に身に付くものであった。しかし,社会環境等の変化の中でそれが難しくなっている以上,学校教育の中で取り立てて指導をしていく必要性を感じる。

 教育相談チームでは,「人間関係をつくる力」を育てる指導援助について継続的に研究を進めてきた。
これまでの研究から,「人問関係をつくる力」を育てるには,「自己肯定感」を高める指導援助を土台に「人とかかわる技能」を高める指導援助を行うことが有効であることが明らかになってきた。

 本研究では,その成果をもとに,人間関係づくりがスタートする小学校低学年児童に焦点を当て,「人とかかわる技能」を高めるための指導援助の方法として,特に「ソーシャルスキルトレーニング(以下SSTと略す)」の考えを取り入れ,その有効性を検証した。

 

U 研究の概要

1 「人とかかわる技能」を高める指導援助

SSTの基本的技法(1) 指導援助を支える考え方(SST)
 SSTは,かつて精神医学の患者を対象とした治療法とされていたが,今ではあらゆる人の対人関係能力を育てる方法の一つとして着目されている。
 SSTでは,児童生徒の対人不適応は,ソーシャルスキルの学習の不足または誤った学習の結果ととらえ,学習し直すことによって獲得できると考える。
 そこで,授業の中に対人関係を学ぶ場を位置付けることにより,対人関係能力の向上や改善を図ろうと考えた。

(2) 低学年「人とかかわる技能」と授業構成
 小学校低学年は,人間関係においても入門期であり,些細なことでのけんかが多い。今回の実践を行った学級でも,学校生活に慣れるに従い友達関係の問題が増えてきたという実態があった。この時期には,けんかをしても関係を改善し進んで友達関係を築くことのできる児童を育てることが大切である。そこで,本研究では低学年児童に伝えたい「人とかかわる技能」を次のように考えた。

◇進んで友達関係をつくるために必要な「人とかかわる技能」
 @仲間への誘い方(「いっしょにあそぼう」)
 A仲間への入り方(「なかまにいれて」)
 B仲直りの仕方(「ごめんね」)

 指導援助は,学級活動の時間に行い,上記の3つの技能をそれぞれ1単位時間ずつ取り上げた。なお,自己肯定感を高める指導援助及び仲間意識を育む活動については,日常的に取り上げることにした。

2 指導援助の実際

 ここでは授業1の様子を紹介する。

(1) 授業実践例(授業1)「いっしょにあそぼう」

[心をほぐす・心に気付く]
導 入

 リラックスした状態で学習活動に取り組むことができるよう簡単なジャンケンゲームを行った。
教 示
人形劇 ペープサート(紙で作った人形)を使った人形劇を見せた。「一人でいるピョン太君に気付いたポン吉君はどうしたらよいか」という場面である。児童からは,「仲間に入れてあげる」「一緒に遊ぶ」などの声が聞かれた。そして,各自どんなふうに誘ったらよいかを考えた。

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