長期研究員の研究 研究紀要第142号教育相談(1)-063/069page
(2) 指導援助後の児童の変容
@ 「人とかかわる技能に関する調査」から
指導援助の前後に「人とかかわる技能に関する調査」を行った。その結果,ほぼ全ての項目で平均値の上昇が見られた。特に,設問8「進んで友達に話すことができますか」や設問10「顔を見ながら明るく友達に話すことができますか」に変化が見られ,友達へ自分から声をかける意識が高まった様子がうかがえた。A 「やってみようカード」から
授業で学んだ「人とかかわる技能」を3日間日常生活の場面で行うよう働きかけた。平均実践数は「仲間を誘う 2.6回」「仲間に入る 1.6回」「仲直りをする 2.0回」であり,限られた期間の中ではあったが友達や兄弟に実践した様子がうかがえた。また,「みんなを誘った方が楽しい。」「いいよって言ってもらえてうれしかった。」「仲直りをしてすっきりした。」など実践したからこそ感じた内容が感想欄に記入されていた。
B 「協力員の先生の話」から
「友達との問題を教師に訴えるのではなく,自分たちで解決している様子が見られる。」「友達にかかわることが苦手な児童が自分から話しかける姿を見るようになった。」など好ましい児童の変容が語られた。
V 研究のまとめ
児童の変容からモデリングやリハーサルを中核としたSSTの考えを生かした指導援助は,低学年児童に理解しやすく,日常生活に反映できる効果があることを確認できた。しかし,授業後に調べた満足度,理解度,実行意欲を個々に見ると,低い値のままの児童もいる。指導援助によって全体の意識を高めるとともに日常生活の中で個別に支援していく必要性を感じた。
今回取り上げた以外にも小学校低学年で育てたい「人とかかわる技能」はある。それらへのSSTの活用についてさらに研究を深めていきたい。〈参考・引用文献〉
1)「ソーシャルスキル教育で子どもが変わる」 相川充編著(図書文化 1999年)
2)「人づきあいの技術」 相川充著(サイエンス社 2002年)