長期研究員の研究 研究紀要第142号教育相談(2)-064/069page

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学校における実効性のある事例研究会の在り方に関する研究
−アンケート調査と事例研究会の実践を通して−

長期研究員 渡 部  修 一

 

T 研究の趣旨

 今日,社会の変化に伴い,学校教育においても不登校やいじめ,校内暴力など様々な問題が顕在化しており,教員が児童生徒を理解してより適切に対応・援助していくことが求められている。しかし,現実には問題を一人で抱え込み,指導に行き詰まったり事態を悪化させたりしてしまう場合も見られる。
 そのような状況のもと,「事例研究会」は組織で児童生徒の理解を進め,かつ教師が支え合える方法であり,困難な問題を抱える学校現場での一層の広がりが期待されている。
 そこで,本研究では「事例研究会」に焦点をあて,多忙で困難な問題を抱える学校現場でも取り組みやすい実効性のある事例研究会の在り方について研究を進めていくこととした。

 

U 研究の概要

1 研究内容・方法

(1) 教育相談実践講座受講者(104名)の各学校における事例研究会の実態調査と研究協力校での事前の事例研究会の実践反省をもとに,学校における事例研究会の問題を整理した。

(2) 実態調査の結果と実践の反省をふまえて,短時間で,具体的な対応策を考えることのできる事例研究会の試案を作成し,研究協力校での実践を通して評価・改善を行い,実効性のある事例研究会の在り方を考察した。

2 研究の実際

(1) 現状と問題点の整理

@ アンケート調査から
ア 事例研究会を実施している学校は全体の約8割であるが,実施している学校の中で5割強は問題の概要の報告のみで終わっている。
イ 事例研究会を全体会で行っている学校が約6割と最も割合が高かった。部会や学年会に比べて全体会では所要時間の長い割合が多くなっている。
ウ 事例研究会を開催,運営する上で,教師の時間の都合,協議時間の確保などの時間に関することや意見が少ないこと,広い視野からの意見がないなどの話し合いに関することの問題が大きかった。また,必要性の認識,事例提供者の負担やアドバイザーがいないという問題も抱えている。
エ 事例研究会を実施していない学校では,生徒指導協議会の場がないことなど組織が機能していないことや,自分の学級のことに関係ないなど意識の低さが問題としてあげられた。

A 事前の事例研究会の実践反省から
ア 資料作成の負担は大きくないが,内容の記述に偏りが見られる。
イ 事例提供者の話が長くなったり,決まった教師が発言したりする一方,まったく話さない教師がいるなど,司会の進め方が難しい。
ウ 指導援助を考えるための手立てがないため,具体的なアイディアが出にくい。

(2) 学校の実態に即した事例研究会の在り方の考察

@ 実効性のある事例研究会の仮説
 学校における事例研究会の現状と問題点をふまえて,実効性のある事例研究会に向けて以下のような仮説を設定した。
ア 学年を単位として事例研究会を行うことで,時間の都合をつけ,効率的に話し合うことができる。
イ 進め方を改善し,段階を踏んで話し合いをすることで,無理なく対応策を考えることができる。

事例研究会A 事例研究会1〈実践内容〉
 実際の事例研究会では,以下の点を工夫し,会の進め方を次ページの表のように改善した。
○ 資料は小項目を設定して記述量を限定し,必要事項の記述が偏りなくなされるようにした。
○ 質問と応答の際に,質問だけでなく対象児童生徒に関する情報提供ができるようにし,情報をより共有するようにした。
○ 協議の場においては,図を用いて問題を客観化・明確化し,対応策を考える参考となるようにした。また,対応策を全員で検討するようにした。


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