長期研究員の研究 研究紀要第142号教育相談(3)-066/069page

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「人間関係をつくる力」を育てる指導援助に関する研究
−高等学校における指導援助プログラムづくり−

長期研究員 猪 俣  雄 介

 

T 研究の趣旨

 教育相談チームでは平成12年度より「人間関係をつくる力を育てる指導援助プログラムづくり」をテーマに研究を進め,12年度には小学校高学年用,13年度には中学校用のプログラムづくりに取り組んできた。
 本年度は高等学校におけるプログラムづくりを,学年・学級の枠を取り払った異年齢集団を対象に行った。これは卒業後の人間関係の多くが年齢を越えたつきあいになることを踏まえたためである。
 研究協力校での事前調査を通し,「人とかかわりたいがその方法がわからない」という実態が明らかとなったため,本年度は特に「人とかかわる技能の向上」を中心に「指導援助プログラム(試案)」を作成し,実践を通してその有効性を検証した。

 

U 研究の概要

1 「人問関係をつくる力」に関する事前調査

 研究協力校において「自己肯定感」「人とかかわろうとする思い」「思いを伝える技能」(以下「技能」)「技能が高まる背景」等について調査を行ったところ,「自己肯定感」と「技能」が他の項目より低い値を示した。そこで今回の研究では,それら2点の向上を目標に据えながら「指導援助プログラム高等学校編(試案)」を作成し,その検証を行った。

2 「指導援助プログラム(試案)」の実践

活動
段階
活動のねらい
T
「うちとける」 仲間を覚える
U
「聴く」 二通りの聴き方を体験する
V
「一緒に考える」 話し手に問い返す聴き方を体験する
W
「話す」 自分も相手も大切にする話し方を体験する
X
「調整する」 友達同士を仲直りさせる調整の仕方を体験する
「伝え合う」 自分や友達の良さに気づく
 ※対象…1〜3年男女希望者30名
 ※活動期間…10月〜11月いずれも放課後に実施

 活動U〜Xでは各段階の活動のねらいが達成されるよう,ロールプレイを中心に系統的にエクササイズを構成すると共に,各活動の後に「ふりかえり」を行い個人の「気づき」を全員で共有するようにした。また,活動全体を通して互いの良かった点を伝え合うことで自己肯定感が高まるよう配慮した。

(1)活動1「うちとける」

うちとける@活動の概要
 2人組になり,自己紹介や自分のペアを他の人たちに紹介する活動を行った。
A生徒の様子
 多くの生徒から「楽しかった」という感想が寄せられ,和やかに雰囲気づくりを行うことができた。



聴く
(2)活動1「聴く」

@活動の概要
 2人組になり,ロールプレイを通し傾聴的な聴き方,非傾聴的な聴き方を体験した。
A生徒の様子
 「ふりかえり」では「体全体を使って話を聴くことで相手に安心感を与えることができることがわかった」等の感想が出された。

(3)活動V「一緒に考える」

@活動の概要
 2人組になり,悩みを相談するロールプレイを行った。その際「聴き手」は「あなたはどうしたいの?」と問い返す,という約東事を決めて行った。
A生徒の様子
 「聴き方カード」を準備する等ロールプレイが円滑に進むよう配慮したが,予想以上に「問い返すのが難しかった」という感想が多く出された。

  活動V後の生徒の意識
活動V後の生徒の意識

問1)「問い返す聴き方」を今後使っていきたいと思うか。
問2)「問い返す聴き方」は今後使っていけると思うか。


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