長期研究員の研究 研究紀要第142号教育相談(3)-067/069page

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話す(4) 活動W「話す」

@ 活動の概要
 2人組になり,友達からかかってきた電話を非主張的,威圧的,アサーティブの3通りの方法で切るロールプレイを行った。
※アサーティブ…相手を尊重しつつ、自己主張する話し方や態度。

A 生徒の様子
 参加者の多くは比較的大人しい生徒であったが,「ふりかえり」から現実の場面ではほとんどの生徒が自分の意見をはっきりと相手に伝え,電話を切ることができるということがわかった。

調整する(5) 活動X「調整する」

@ 活動の概要
 3人組になり,口げんかをしている2人の仲裁をするロールプレイを活動U「聴く」V「一緒に考える」W「話す」の集大成として行った。その後,活動全体を通じて気づいた友達の良いところや,してもらった行為に対する感謝の言葉等を背中にかけた用紙に書き合った。

生徒の様子A 生徒の様子
 活動Vの「問い返す聴き方」を取り入れながら一生懸命2人の関係を調整しようとする姿が印象的だった。また「伝え合う」活動では,非常に熱心に感謝の言葉等を伝えていた。書かれたものを一斉に読んだ時の静寂から生徒の充足感が感じられた。

3 考察

 活動Uの傾聴的・非傾聴的な聴き方の体験は,全ての生徒がその後の活動に傾聴的な姿勢で臨む土台となり,生徒の安心感や自己肯定感を高めていく上で大変有効であった。
活動Vの「問い返す聴き方」については「練習」の機会を更に設けることで「使っていける」という自信も高まっていくと考えられる。

 活動Wからは,一見非主張的に見える生徒も自分の意見を表出する力がないのではなく,その表出方法や表出の程度がわからないという点が課題なのではないかということがうかがえた。活動V同様「練習」の機会を設けることが課題克服の一助となるのではないかと考える。

 活動Xは,問題の解決に至らなかった生徒にとっても自分の新たな一面に気づいたり,自信を深めることができた時間となったようである。前回の活動で課題となった潜在的な「自己表出力」の発揮という観点からも「調整する」活動はその力を引き出す上で有効な体験であったことがうかがえた。

 

V 研究のまとめ

活動前後の生徒の意識(4件法による調査)
活動前後の生徒の意識

 活動前後で数値的には大きな変容は見られなかったが,活動後の生徒のコメントは

 ・最近は友達とかなりしゃべっています。
 ・前よりのびのびした気持ちで過こせている。
 ・周りの人たちと自然に接することができ始めた。 等

という肯定的な評価が多かった。このことから以前に比べ安心感や自己肯定感が高まったことが推察される。また肯定的な自己理解(「自分にも良いところがあると思う」)や自己表出(「のびのび生活できている」)の項目で数値の上昇が見られ,この点からもプログラムを実施する意義が確認された。上記の結果を受け,プログラム(試案)に修正を施し「指導援助プログラム高等学校編」を作成した。

 今後はプログラムの普及に併せ,プログラムを実践できる教員を増やすことも課題の一つである。そのため教育相談チームでは,講座の中でプログラムについて取り上げ,研修者が演習を通して体験的に実践力を高めることができるよう支援している。

〈参考・引用文献〉
1)ピア・サポートではじめる学校づくり(小・中学校編)滝  充編著(金子書房)
2)エンカウンターで学級が変わる(小・中・高等学校編)國分康孝監修(図書文化)
3)言いたいことがきちんと伝わる50のレッスン 平木典子著(大和出版)


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