福島県教育センター所報ふくしま No.13(S48/1973.11) -005/026page
高 枚 教 材 統計的推測の指導
―仮説の検定を中心として―
第1研修部 津 田 俊 晴
1 はじめに
高等学校学習指導要領解説(数学編,1972,文部省)の数学IIIは,「統計的な推測における基本的な考え方にこついて理解させる」とある。
そして,推定と検定をあげている。ここでは,このうちの検定について考察し,そこにある基本的な考え方を明らかにしてみたい。
2 指導内容
考えられる指導内容は,次の(1)〜(3)であろう。
(1)仮説を棄却するときの考え
(2)平均値め検定
(3)片側検定・両側検定の考え
3 仮説の検定
指導内容の概略をみるために,仮説の検定を概観してみよう。
(1) 仮説を棄却するときの考え
「表のでる確率が1/2であると主張されている一つの銅貨がある。この銅貨を10回投げたら,表が9回でたとすると,はじめの主張は採用しうるか」。
この例を偶然変動で考えてみる。
1)統計的仮説
母集団は二項分布P r (Χ=χ)= n C χ P χ
2)有意水準
表のでる回数の実現値と期待度数E(Χ)とのずれ|Χ-5|を考え,P r (|Χ-5|≧ a)を求めると,a=4のとき 0.0215 a=3のとき 0.1094となる。
そこで,有意水準 α を0.0215とする。
3)偶然変動の範囲
「|Χ-5|が,偶然変動の範囲にあるかどうかの判定基準として,2)により|Χ-5|≧ 4ならば,偶然変動の範囲にない」を採用する。
したがって,棄却域wは{ Χ||Χ-5|≧4}と定まる。
4)仮説の棄却
標本点χ=9はwに属するので,仮説 P=1/2は棄却される。
仮説を棄却するときの考えを4段階にわけて展開したが,この展開から検定法は棄却域wを定めることによってきまるといえる。
したがって,ここでの基本は有意水準と偶然変動の考えである。
(2) 平均値の検定
「点数の分布が正規分布N(60,5 2 )に従うようにつくられていると主張されているテストがある。
ある人が無作為に選んだ10人に,このテストを試みたら,その平均は56点であった。はじめの主張は採用しうるか。」
この例をσ=5として検定してみよう。>
1)統計的仮説
母集団は に従うので, とおくと,N(0,1 2 )に従う。したがって,n=10, σ=5のとき μ=60と仮定する。
2)有意水準
試みによる平均Χの実現値と期待平均点E(Χ)=μのとのいずれ|Χ-60|を考え,有意水準αを0.05として