福島県教育センター所報ふくしま No.18(S49/1974.11) -002/025page

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学習指導の最適化をはかるための手だて

小・中学校教材

関数の定義の指導をめぐって

第1研修部 戸田 満夫

1. 教科書に見られる関数の定義

関数の定義がとりあげられるのは、中学数学1年からで各教科書では次のように記述されている。

T社
数学 I
一般に集合Xの要素xを1つきめると、そ れにつれて、集合yの要素が1つだけきま るとき、 このような対応を 集合Xから集合 yへの関数という。
K社
数学 I
一般に2つの集合X、Yがあって、Xの要 素をきめるとそれに対応してyの要素が1 つきまるとき、この対応を集合Xから集合 Yへの関数という。
K、S社
数学 I
2つの集合X、YがあってXの要素xが決 まればそれに対応して、yの要素yがある きまりで1つ決まるとき(一意対応)この XからYへの 対応の規則 を関数という。ま たは、yはxの関数であるともいう。
G社
数学 I
2つの集合A、Bがあって、Aのどの要素 κに対しても、Bの要素yを1つだけ対応 させることができるとき、 この対応のきま り を、AからBへの関数という。
D社
数学 I
2つの集合X、Yの要素をx、yとすると きxの値に対応するyの値の決まり方には いろいろあるが、それらは、
(1) どのxの値に対しても、yの値が1つ だけ対応する。
(2) あるXの値に対しては、yの値が2つ 以上対応する。
のどちらかである。2つの集合X、Yが あってXのどの要素xに対してもyの要素 yがただ1つだけ対応するとき、 その対応 をXからyへの関数という。

これらの定義は次のように分類される。
(1) 2つの変量x、yがあって xのとる値が変わるにつれ、yのとる値が変わっていくとき 、yはxの関数である。
(2) 2つの変数x、yがあって xの値が決まると、それに応じてyの値も定まるとき 、yはxの関数である。
(3) 2つの集合X、Yがあって、Xのどの要素xに対しても、Yの要素が ただ1つだけ対応するとき 、その 対応の規則を XからYへの関数という。
(4) 2つの集合X、YがあってXのどの要素xに対しても、Yの要素がただ1つだけ対応するとき、 その対応を 、Xからyへの関数という。
(5) 2つの集合X、YがあってXのどの要素に対してもYの要素yがただ1つだけ対応するとき、 順序対(x、y)の集合を 関数という。
このような分類の結果、小学校では関数の定義にはふれないが、関数の意味を(1) (2)に重点を置いて指導し、中学校では(3) (4)の立場から、2つの集合の要素の関係という広い意味で指導し、(5)は方程式や、不等式のグラフと関連させて、より一般的な立場から指導している。

2. 「定義」をとりあげるにあたって

関数の定義を、岩波書店:現代数学概説 I (現代数学1):弥永昌吉、小平邦彦著に求めると、
「Γ=(G、M、N)をMからNヘの対応とするとき、その定義域Dの任意の要素xに対して、Γ(x)がNのただ1つの要素から成るならば、Γは一価であるという。Γが一価であるとき、Γによってxに対応する値をyとすれば、Γ(x)={y}であるが、これを略してしばしば、Γ(x)=yと書く。
− 価であって、しかもDomΓ=Mであるような対応をMにおける関数または写像という。」・・・のように記述されている。これを図で表現すれば、次のようになる。


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