福島県教育センター所報ふくしま No.27(S51/1976.8) -002/026page
小学校教材 社会科における教材研究のすすめ方
-教材の精選をめぐって-
第1研修部 境 野 啓 二
1. はじめに
社会科指導において,どのように教材を精選し,どのように指導の重点化をすすめたらよいかが重大な課題となっているが,この課題は古くして新しい課題であるといえよう。つまり教材の精選等ということは表現こそ変わっているが,本県においても昭和30年代後半頃から基本的事項の精選とか指導内容の構造化という形で研究がすすめられてきたのである。したがってこれらの成果を十分にふまえた研究を展開することが効果的であるといえよう。また発見学習にしても探究学習にしてもこの課題の解明を抜きにしては考えられないものであることを銘記しておきたい。
今年度から,更に現場に直結した魅力のあるものにという願いをこめて,小学校社会の講座内容も一新したが,教材の精選・指導の重点化の研究の一助になれぱ幸いであるという考えにもたち,「教材研究のすすめ方」「目標・内容分析」「学習指導案の作成」「TPの製作と活用」という一連の講座内容を設け,講義・演習を中心に研修をすすめている。そこでその概要をお知らせして研究の資に供したい。
2. 教材研究
教材研究のとらえ方には種々の説があるが,普通次の二つに大別されるという。
- 指導内容について,教師が知識を増し,教養を高めること。
- 実際の授業の流れを予想しながら,生徒をどのように指導したらよいか,どのように教材を構成したらよいかを考えて,仮説的な指導案をつくること。
前者については,教職専門家として,また現代教養人として常時究めなければならぬことであり,教材研究の基底となるべきものであると考えられる。本稿では,後者的な立場をとりながら論をすすめたい。つまり教材研究を次のようにおさえたいのである。
○だれが ・授業する者が, ○いつ ・授業前に, ○どこで ・あらゆる所で, ○なぜ ・授業充実のため, ○どのように ・実際の授業過程を予想しながら, ・児童(学校・地域も含む)の実態を考慮して, ・教材についての研究(教育的価値,構造,関連などのは握)をして, ○なにを ・学習指導案の大要を作ることである。 従って,教材研究の結果としては授業の質的な向上を目指した学習指導案の完成という形で現れるのである。
3. 教材研究のすすめ方
教材研究を効果的にすすめるためには,計画-実践-評価-計画のサイクル的な考えをとり入れる必要がある。その各段階を示すと次のようになる。
段階 内容 計画 ・教材研究のねらいのは握・視点の設定・内容のは握・方法の明確化 実践 ・教材研究の実践(目標は握・教材選択・内容は握・指導計画の作成など) 評価 ・授業とその反省・教材研究の評価,改善 そこで,計画,実践,評価にわけ頁数の許す範囲内で研修生の研究成果を紹介しながら説明を加えていきたい。
(1)計 画
計画の段階で,まず必要なことは教材研究のねらいのは握であり,視点の設定による目標の明確化である。
- 教材が含んでいるねらいや指導事項の研究
- 教材を成りたたせている事実の研究
- 児童に教材を即応させるための研究
- 教育目標(努力点)達成のための研究
- 現職研修の研究主題解明のための研究
- 授業の間題点解決のための研究
- 有効な計画(単元)づくりとして行う研究
これらは,視点の例であるが本講座の場合当然のことながら教材の精選のための研究であり,指導の重点化の研究である。
次に考えなければならないことは,この目標を達成するためにはどんなこと(内容)について,どのよう(方法)に実践するかという計画をたてることである。従来の教