福島県教育センター所報ふくしま No.27(S51/1976.8) -003/026page
材研究は個人の研究になりがちであったが,近年共同研究の成果が報告されることが多く,教材・教具の高度化多様化の時代にあたり開発されなければならない方法である。本講座の場合,研修グループを編成し,共同研究の体制をとっているのは,この立場によるものである。
(2) 実 践
計画に従って実践するわけであるが,それには指導目標のは握,教材の選択,教材内容のは握,指導計画の立案がある。
1. 目標をは握する。
なんのために指導するのか,その目標を正確には握しておかなければならない。つまり教科の目標から,学年目標,本時の目標にいたるまでのつながりをおさえ,目標の系統的な関連は握が必要である。
教科目標-学年目標-単元目標-本時目標
それには,学習指導要領の目標・内容のは握,単元(小単元)目標の設定とその分析,そして本時の目標の設定が必要となる。その際留意すべき事柄として次のことがあげられる。
- 上位目標から下位目標にむかってより具体性をもたせる。
- 中学校,他学年,他教科・他の題材との関連をは握する。
- 目標の各段階で理解,態度,技能等の観点から分析する。
- 学習指導要領およびその指導書の文章表現,表記を正しく読みとる。
- 本時の目標は,直接観察できるような児童の行動の変化としてとらえられるように工夫する。
この研究は煩雑であるので敬遠されることが多いが非常に大切なことである。研修生の中には,作業の能率化を図るつもりで本時の目標を研究の原点であるとするものもあったが,子細に検討を加える過程で疑問につきあたり,結局は教科および学年目標から検討しなおす場面が見られたのである。
2. 教材を選択する。
身辺に散在する多くの事象や事物から目標達成に必要な教材を準備し,その中から最も適切な教材を選択する必要がある。これが教材の選択であり,教材の精選である。目標のは握と平行して進められることも多いがこのことは,目標のは握なしには教材の選択(精選)はできないことを示している。選択の際,次の事柄に留意したいものである。
- できるだけ多種多様な数材を準備する。
- 教科書は主たる教材である。教科書でとり上げられた教材は必ず概観する。
- 教材間の系統,関連(順序・発展性)を考慮する。
- 児童の実態,学校や地域の実態等を考慮する。
3. 教材内容をは握する。
教材を選択するには教材内容を十分には握しておかなければならない。従って,これは教材の選択(精選)と同時に行われることが多い。
教材内容をは握するには,選択された教材内容の構造を明らかにしたり(教材内容の分析),教材の関連を明らかにする(教材の関連分析)ことが効果的であり,これによって目標をふまえた内容は握が可能となり,更に精選され,指導の重点が明確になってくるのである。
教材構造を明らかにするには,目標からみて中心となるもの(中心となっていることがら・中心観念),それをとりまく基本的なもの(基本となっていることがら・基本要素),更にそれを支える具体的なもの(具体的な学習事項・具体要素)をは握しなければならない。
教材の関連を明らかにするとは,その教材と他の教材(他教科の教材も含む)との系統,配列上での関連をは握することであり,学習を効果的にすすめる上で欠くことのできないものである。更に児童の認識の過程との関連をおさえておくことが必要なことはいうまでもない。
教材の構造を図式化(構造図の作成)することによって,内容は握を容易にすることができるが,大切なことは図式化の作業を通して認織を深め,図式化のための言葉の吟味等によって鋭角的には握ができ,重点的に取り扱うべきことがらが更に明確になるということである。
しかし,ここで注意しなければならないことは,図は一見して全容がわかるものが望ましいということであり,そのためには簡潔であり,中心となるものとのつながりが明瞭であることが必要になる。中央部に中心となるものを位置づけたり,わくや線の使い方等にも留意し定めた要領のもとに図式化することも大切である。
研修講座では,この教材構造を小単元と本時の題材について図式化(構造図を作成する)する演習をとり入れた。研修グループを作り,この講座以後に自校に帰り指導する単元の中から研究単元を見つけ教材構造のは握にとりかかった。研修時間の関係上,目標は握は,学習指導要領の目標・内容とその単元・題材との関係を確認する程度にとどめ,目標分析の図式化までは行わなかった。しかし,十分とはいえないがそのことによってその単元,小単元,題材の役割が明確になり,中心となることがらを読み取り,それにせまる観点とともに基本となることがらを選択することができたのである。そこで小単元と題材の構造を整理したが,ここで初めて教科書やその指導書が役立てられることになったのである。つまり教科書における教材の価値,配列の意味などを理解できたのである。しかし同時に自校の児童にとってはむだのあることを知り,教材の精選(むだを省くだけでなく,必要なものをつけ加えることも含む)が,更にすすめられたわけである。そしてここで児童や地域などの実態を大いに生かすべき結論を得たのである。
ここで留意したいことは,構造図を書くことが目的で