福島県教育センター所報ふくしま No.27(S51/1976.8) -005/026page

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中学校教材

「イオンの移動について」

第2研修部  長 谷 川  件 七 郎 

はじめに

 中学校第一分野のイオンの移動については,Na 2 SO 4 をしみこませたろ紙の上に,電解質を置いて,電流を流す方法や,イオンが移動できる隔膜で区分された3つのへやにLi 2 Cr0 4 の水溶液を入れ黄色を示すイオンを観察する方法がとりあげられている。 

これらは,ろ紙の上にイオンがしみだして,イオンが移動していることがわかりにくかったり,高価な装置が必要なために,容易に実験ができないように思われる。 

 そこで,イオンが直線的に移動していることが,はっきりわかり,簡単に実験できる方法をとり上げてみた。

 1. U字管を用いてイオンの移動をみる実験

図-1
図-1

 図-1のように,U字管の底の部分に,水100g NaCl 5g, 寒天3gを溶解したものに,フェノールフタレインを数滴加えて凝固させる。 

 ―(マイナス)側にNaOH 溶液(O.5N)+(プラス)側にH 2 SO 4 溶液(O.5N)を入れ,20V〜30Vの直流電圧を加えると―(マイナス)側の0H - が+(プラス)側に移動するため無色の寒天が紅色になって,イオンの進行するようすがはっきり観察できる。電極には白金線やニッケル線が適当であるが,炭素棒でもよい。 

 この実験では高い電圧の直流が必要であるが,次のような方法がある。

 

 (1) トランジスター用乾電池を直列に接続する方法

 22.5Vのトランジスター用乾電池を3個直列につなぐと無負荷で60V以上の電圧が得られるが,この実験では10V程度に電圧が降下してしまい,あまり効果的ではない。

 

 (2) 電源装置の直流電源を直列に接続する方法 

 中学校理振の電源装置(5A-12V)ならば,3個直列に接続すれば,この実験の場合十分である。電圧を調節するときは,1個の電源装置のボリウムで,全体の電圧を調節できる。

 

 (3) 整流素子を用いる方法 

 AC100Vをシリコンダイオード(IS1887)をつかって,図-2のように整流する。簡単で,しかも安価にできるので,この実験には最適である。

図-2
図-2

 2. 自作教具を用いてイオンの移動をみる実験

写真-1
写真-1

 写真-1のように,アクリル製の透明な容器(ホッチキスのケースで60円で市販されている)にドリルで穴をあけ,外径9mmのガラス管を長さ50cmに切り速硬化エポキシ系接着剤(Hi-Super)で接着すると10分程度で完全に硬化し漏水しなくなる。ガラス管の太さはイオンの移動速度には関係がないので適当でいいが試験管くらいの太さにするには,容器に穴をあけるのに容易でないことと,あまり太いと電流が流れすぎて,発熱するためガラス管内の寒天がとけてしまう場合があるので,外径9mm程度のガラス管が適当である。

 ガラス管は長い方が観察しやすいが,あまり長くすると,イオンの移動には高電圧が必要になり,移動に要する時間が長くなる。4〜5p程度が適当である。

 ガラス管は一本でもよいがニ本の方が効果的である。その理由は,+(プラス)イオンと―(マイナス)イオンの移動が,別々にしかも同時に観察でき,イオンの速さが比較できるからである。

 (1) H + およぴOH - の移動の観察

 図-3のガラス管内にはU字管で用いた寒天と同じも


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