福島県教育センター所報ふくしま No.27(S51/1976.8) -007/026page
高等学校教材 「均時差を生じさせる要因について」
-探求的に思考させるために-
第2研修部 渡 辺 専 一
1. はじめに
高等学校・地学・IIにおいて,「均時差を生じさせる要因について」の指導は,内容が高度であることと、実験が困難であることなどの点で,なかなか容易でない領域とされている。
このことについて,私は,より効果的な方法を試み,成果があると思われたので紹介したい。
すでに知られているように,均時差を生じさせる要因としては中心差によるものと,道差によるものがあげられている。
中心差とは,地球を固定して考えれば(観測者を天球の中心において考える),太陽が地球をケプラーの惑星運動の第二法則(楕円運動)にしたがって運動しているので,その軌道上の運動速度が年間を通じて一定していないため,毎目少しずつ,時刻に差が生じてくることをいう。
道差とは,太陽が仮に黄道上を一定の速度で運動をしたとしても,地軸が太陽運動面に対して直交でなく,傾いているために,地球上では一定の速度として観測されずに,毎日の時刻はやはり一定にあらわれてこないことを言っている。
これら二つの要因を合成した結果として均時差が生じてくることになるわけである。
次の項から,それぞれの要因を分けて,探究的に学習を深めさせる方法について述べる。
2. 作図による中心差の実習(ケプラーの惑星運動に関する第1, 第2法則をもとに)
作図によって中心差の概念をは握させることは,直視して思考できるという点で極めて効果がある。もちろん太陽の年周運動そのものを作図のもとにするわけにはいかない。それは,年周運動そのものが,きわめて円運動に近いものであるため,肉眼的に軌道上の速度変化を認めることが困難であるからである。
そのため,少し誇張された形で実習させる必要がある。
(もちろん,この場合,思考する内容のポイントははずさない様にするのは当然であるが)。以下作図の方法を順を追って述べる。
(1) 図-1に示したように,半径8pの円を書く(平均太陽の軌道)・・・・・・円の中心は地球。
(2) 地球の公転軌道の離心率は,0.0167であるが,これを仮に0.2とし,円の中心を焦点の1つとする楕円を描き,(公転軌道はほぼ円軌道に近いのでこの場合円を描く),これを視太陽の軌道とする。
(3) 円周上の近日点を基準として,平均太陽の軌道について30 。 ごとに線を引き,遠目点までの1か月ごとの平均太陽の位置を記入する。
(4) 楕円については,ケプラーの面積速度一定の法測にしたがって1か月ごとの視太陽の位置を基点から図-1の様にとる。
(なお,図-1は遠日点後については記入していないが,近日点,遠日点を結ぶ線と対象的に角度を目盛らせる)
(5) 視太陽と平均太陽の位置のそれぞれに対応する位置の角度の差をグラフ用紙に表示する(もちろん,近日点では,その差が0 。 であるが,図-1のa 。 ,b 。 ・・・・・・の場合は角度の差が出てくる。この場合,これを分(ふん)単位になおして記録する必要がある)。
(6) それらの点をなめらかな線で結んだのが,図-3の中心差の変化のグラフである(たて軸の時間の目盛については前述の理由で誇張したものとしてあらわれる)。
3. 透明半球による道差の実習
前述のように太陽が黄道上を,ケブラーの運動の第2法則にしたがわずに一定の速度で運動しているとしても,地軸が太陽運動面に対して傾いているために,均時差に影響を与える。
そこで次の様な順序で透明半球を2個もちいて,その様子を数量的には握させるようにする。
(1) 透明半球2個をあわせ,球を作り,これに図-2の赤経に沿って画用紙(幅5mm)を切りとり,天の北極天の南極を軸に自由に回転できるようにする(図-2に赤経の線が3本記入してあるが,この画用紙のベルトはどの位置でも線が引けるようにしたものを言う)。
(2) 次に,それぞれ天の赤道(透明半球のつぎ目)や黄道を定める(この場合,黄道は,実際には,23.4 。 であるが,40 。 〜50 。 ぐらいに誇張して糸などをもちいてセットする)。
(3) 黄道上に月別の平均太陽の位置を記入する。基点は,春分(3月20目ごろ)として,順に4月20目,5月20目・・・・・・と入れていけばよい(図-2のa, b, c・・・・・・)。
(4) これを,(1)で述べた天の子午線ベルト(画用紙のベルト)によって,赤道上にうつしかえる(図-2の