福島県教育センター所報ふくしま No.27(S51/1976.8) -010/026page
表2 (I - )(H + =10 -4 M/l)とV \番号 混合の割合 ml 初濃度 M/l t sec. V M / l.sec A H 2 O E C-I (I - ) 0 (S 2 O 3 2- ) 0 (H 2 O 2 ) 0 1 10 0 5 5 5×10 -3 1.3×10 -4 0.118 9.5 6.32×10 -6 2 8 2 5 5 4 // // 12.5 4.80 3 6 4 5 5 3 // // 16.2 3.70 4 4 6 5 5 2 // // 23.2 2.59 5 2 8 5 5 1 // // 47.2 1.27 v=k 1 (I - )と考えられるので(5)式のnの値は1となる。
同様に(H 2 O 2 )-Vのグラフを書くと,図2のような結果が得られる。このグラフからVと(H 2 O 2 )の関係を考えれば,V=k 2 (H 3 O 2 )となるので(5)式のm=1が求められる。(H + )を変化させた場合(I - ,H 2 O 2 一定にして)その値を10倍変化させてもVの値はほとんど変化しないで一定なのであるから,この程度の酸性溶液では,(5)式のPの値は0と考えるのが妥当である。
結局(5)式をまとめて書きなおすならば次のようになる
dx/dt=k(H 2 O 2 )(I - ) (6)
(1)式に対する速度式が(6)式で表わされることから考えて(1)式の変化が起こる過程で次の(7)式の変化が起っていることを推論することができる。
即ちH 2 O 2 とI - の反応は,一度に5分子が衝突して反応して行くのではなく,全く別の反応径路をとって起るのである。化学反応式は,正しい反応の径路を表わしているとは限らないのであることがこれからもわかる。
しかし,(7)式の導入までは,実験結果の考察から探究的に求められるが,(7)式の右辺に何ができるのか,また,(1)式の全体の反応径路がどうなっているのかは,これだけの実験からは情報を得ることはできない。
これから先の情報は,現段階では実験的に求められないのがこの教材の難点である。従って,(7)式を求めた後は探究的学習ではなく,指導事項になっていく。
H 2 O 2 とI - の反応は,次の径路をとって反応するといわれている。
つまり(9),(10)の反応は非常に早い反応であるが,(8)式の反応が遅いので全体の反応の速さは最も遅い反応速度に左右されるので,(8)式が全体の速度を決めている。この反応が律速段階になっている。
この律速段階の指導には,よく水槽モデルとか道路モデルなどか用いられているので,それらを用いて指導すればよい。また(1)式にみられるように一見単純そうな反応も内容は複雑でいくつかの素反応に分けることかできることも同時に指導できる(多段階反応)。
2. 触媒による反応速度の変化
(1)式の反応は触媒によって大きな影響を受ける。触媒としてCuS0 4 溶液が用いられる。
0.01M-KI 2ml H 2 O 8ml 4.8×10 -4 M-Na 2 S 2 O 3 5ml 0.47M-H 2 O 2 5ml
0.05M-CuSO 4 0適 1 2 3 t秒 42.0 19.4 15.6 13.8 3. 温度による反応遠度の変化
測定溶液の混合割合は,触媒の場合と同じにする。5 。 Cから55Cまで5 。 C間隔でtを測定し,Kの値を求め,それをグラフ化しその勾配から活性化エネルギーを求めると,E=10.3KCal/Mの値が求まる。
(1)式の反応の速度を,時計反応を利用して測定してみると,以上述べたように反応の速度式を求めることができ,その式から反応次数,多段階反応,律速反応などの手掛かりが得られる。速度式の定数kの値は25 。 Cで1.11×10 -2 〜1.06×10 -2 l/M・Sの範囲で求めることができる。更に触媒の働き,活性化エネルギーの概念の指導など広範囲に利用できるので今後研究・検討し取り上げていきたい実験である。
参考資料 化学教育 24巻第2号
化学反応論へのアプローチ化学反応の速度