福島県教育センター所報ふくしま No.27(S51/1976.8) -012/026page

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 4. ITPAの実施結果の分析と考察

(図-1) A児のITPAプロフィール

  (全体のPLAは5歳4ケ月で,下の破線に示す)
(図-1) A児のITPAプロフィール

 本検査のSSは普通児9歳級までしか出ていないが発達年令的な面でMAやCAとの対比などで現段階をみたり,下位検査のプロフィールから個人内差を視察し,治療の指針とするため,PLAを用いた。

 精神発達遅滞の子どもの場合のITPA適用年令基準・CAをMAにおきかえることについては,村上禎治が検討し,可とする意見が報告されている(心理測定ジャーナル,昭51・5・1)

  1. CA・MA・SAとの対比
    • CA:15歳に対して,PLA:5歳4か月程度と約9歳程度の遅れがうかがわれ,かなり大きな遅滞である。
    • MA:5歳8か月程度に対しては,ほぼ同程度である。
    • SA:6歳9か月程度でPLAより1年程高いがCAとの対比では,SAの大きな遅れとほぼ同じとみられる。
  2. 表象水準と自動水準の間にみられる問題点
    • 表象水準の平均PLA:7歳に対し,自動水準の平均PLAは4歳3か月程度で,そこに約3歳程度の差で自動水準の劣りがみられ,組織化され,統合されたパターンを,より無意識のうちに用いるコミュニケーション行動は,個人内でもかなり劣るということがうかがえる。
  3. 表象水準内での問題点
    • 受容能力PLAは7歳3か月,連合能力PLAは6歳2か月,表現能力PLAは4歳3か月で,解号>連合>構号というすがたで,構号段階の遅れが大きい。
    • 聴覚・音声に関するものが,視角・運動に関するものより高く,その差は,連合,解号において大きく構号において少ない。
  4. 自動水準内での問題点
    • 構成能力PLAは5歳10か月,配列記憶能力は2歳9か月と約3歳の差で大きく遅れている。
    • しかし,この水準内では,視覚・運動に関するものの方が,聴覚・音声に関するものより高い。

 5. 考察からの示唆

  1.  本児の言語学習能力の劣りは,知能の低さだけでなく,社会性の未熟さにも大きくかかわると思われる。
  2.  二水準間のアンバランスは,意味的教材そのものの指導より,意味的教材の理解を支援するような基礎的自動的能力や技能の重視を示唆していると思う。

     いいかえるなら,表象水準のシンボリック過程の発達と併行して,自動的反応を発達させるような指導を考慮せねばならないということだろう。

  3.  表象水準の中のカテゴリー化の能力をたかめるため準数概念形成の指導と関連させながら,カテゴリー化のための基準のレパートリーを拡げてやる指導も重視されねばならないだろう。
  4.  自動水準の促進をねらう点から,指導内容の配列はスモールステップにはなっていても直線的なきらいになり易いので,スパイラルな形に改編する必要があろう。(奥村武司は,軽度精簿などの場合,さらにスローステップの原理やドリル学習などにより,学習を完成させたのち,過剰学習の必要を提言している。)
  5.  治療的指導を濃くするについては,他の基礎的な調査も必要であろう。
  6.  専門医による脳波検査の詳細な所見を得ることができたならば,脳の機能の局在論との関連で,補償すべき点,促進すべき点がより明らかに示唆されるのではなかろうか。

 6. 指導方針への反映と授業研究

 (1) 指導目標方針における「5」の「2」の重視,「5」の「3〜4」を考慮した指導内容の配列(省略:福島養護学校研究紀要No.2を参照)を試み,手はじめに,視覚と触覚を表象のための手がかりの


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