福島県教育センター所報ふくしま No.27(S51/1976.8) -021/026page
- 筋がとおっていてよく書けたものを印刷して配布したり,書写させたりして,次回の参考にさせた。
ウ 授業と家庭学習をどう結びつけたか。
- 自己表現記録用紙は2時間に1回程度提出させ,できるだけその目のうちに添削して早く生徒に返すようにつとめた。
- 添削されたものを家庭でもう一度整理して書きなおさせ,授業での発表が効果的・能率的にできるようにさせた。
- 自分が書いた内容にあった絵を用意させ,それを用いて発表させた。
- 自已表現記録用紙をもって積極的に教師に質問にくるように指導した。
- 生徒の実態にあった内容と程度の参考資料を必要に応じて与え,家庭での学習ができるようにした。
(2) 検証と考察
1. 実践例と検証
上位,中位,下位の中からそれぞれ1名を選び,実践の例をあげてみる。下線部は教師が添削指導した箇所を示す。( )内の数字は書いた月日である。
- 下位男子(T)
I can s pea k English a little . But I can 't write English . (9/26)
I want to buy a good camera. Be cau se I am a member of the camera club. But my father doesn't give me much money. I want to buy a new bicycle , too.(12/15)
この生徒の場合,9月の時点では書けた文が2つ,誤りが6か所もあった。12月になって初めて4個の文を書くことに成功している。若干の誤りはあるものの9月に比較すると約2分の1に減少している。月を追うごとに量的にも質的にも向上していることが認められる。
- 中位男子(H)
I have three friends in our school.
They are good boys. We like sports and s cien ce. (9/30)
This is the letter that my brother sent to me yesterday. He is a college student. He lives in Hokkaido. He says , "It's very cold here in Hokkaido." I think that he 'll come home soon. (11/28)
Hの場合,11月に入ってからぐんぐん伸ぴてきた。9月の下旬に書いたものを見てみると,3個の文は全部現在形で書かれており,内容も平凡である。11月になって5個の文を書くことができた。全体として筋もしっかりしてきたし,未来形や過去形も用いるようになった。Tの場合同様,Hも進歩のあとが認められる。
- 上位女子(K)
I was surprised to see an old album last Sunday. Because I found some pictures of my own in it. I like them very much. (9/26)
We had a visitor last evening. The man was one of my father's old friends who lived in Fukushima. He was a painter. He brought a picture with him. My father likes pictures very much. He said to himself, "What a nice picture this is! This is the most wonderful picture that I've ever seen." (12/18)
Kが9月に書いたものと12月に書いたものを比較してみると,内容と表現の豊かさの点で,12月のものがぐんとよくなっている。関係代名詞,形容詞の最上級,現在完了形などの文を上手に使っている。上位の生徒の場合は進歩の状況が早い。
身近なことについて数個の文を書くカがどう伸びてきたかを尺度設定基準にもとづいて整理したのが表4である。
<表4>身近なことについて数個の文を書く力の変容 評価\ 実験群 統制群 事前 事後 事前 事後 A 8% 19% 11% 17% B 14 33 14 22 C 17 17 19 28 D 33 17 25 11 E 28 14 31 22 事前の検査では実験群と統制群の間にどの評価段階をとってみても大きな差はなかったが,事後の検査では,AとBの段階の合計が統制群では39%であるのに対し,実験群では52%となっている。
基本文型(適語選択補充),語順(3っの語群),和文英訳(身近な日常的表現),語い,文字および符号,語形変化を含む「書くこと」についての総合問題を自作し,事後テストを行なった。結果は表
<表5>「書くこと」の領域についての事後テスト \ M SD 実験群 73.2 15.8 統制群 57.0 22.7 検定 F 0 =2.064 F 0.05 =1.75 ∴ F 0 >F 0.05 F 0 =0.741 F(1.35;0.05)=4.11 ∴ F 0 <F (1.35;0.05) 有意差 ない