福島県教育センター所報ふくしま No.27(S51/1976.8) -022/026page
5の通りである。平均の差の検定により危険率5%で有意差は認められなかった。
2. 考 察
英語学習に対する生徒の意識はどう変ってきたかについては,英語学習に対する興味関心と家庭における1日平均の学習時間の2つの側面から考察した。
6月の調査では,英語が好きな生徒は実験群,統制群とも20%弱であった。12月の調査では統制群において28%(10%の増),実験群では53%(39%の増)と大きく変容している。
学習時間についても実験群の伸びが統制群にくらべて著しい。学習意欲と家庭での学習時間は比例しているとみることができる。
<表6>英語学習に対する意欲の変容 \ 実験群 統制群 6月 12月 6月 12月 意欲 たいへん好き 0% 11% 0% 14% 好き 14 42 18 14 普通 34 22 30 42 きらい 26 11 40 19 たいへんきらい 26 14 12 11 一日の学習時間 91分以上 3 8 0 0 61分〜90分 6 3 11 8 46分〜60分 16 42 14 36 31分〜44分 22 25 28 27 0分〜30分 53 22 47 27 実践例,表4,表5,表6などから全体的にいえることは次のとおりである。
- 「書くこと」の領域についてのぺ一パーテストの結果では,実験群と統制群との間には有意な差は認められなかった。
- 身近なことについて数個の文を書く言語活動は,仮説にもとづく本格的な指導を開始してから約2か月後あたりから量的にも質的にも深まりが認められるようになってきた。
- 「書くこと」の言語活動を書くことだけに終らせることなく,授業の中で全員に口頭で,あるいは読むことによって発表させたことは,「聞くこと」や「話すこと」さらに「読むこと」の練習にもなり,総合的な言語活動になったといえる。
- 3年の教材だけでなく1〜2年の教材,既習の文型を自分の力に応じて用いることができるので学習意欲と積極性がでてきた。
- 基本文型,Spelling,句読点,語順などに対する注意力が高まり,辞書の活用も進んで行なうようになった。
- 中・下位の生徒も積極的に質問するようになってきたことは,授業中はもちろん,家庭学習もしっかりするようになったことを意味する。
3. 結 論
- 生徒の個人差に応じて,身近なことについて数個の文を書く指導を継続していけば,英語学習に対する意欲が高まることがわかった。
- 身近なことについて初めはほとんど書くことができなかった中位群,下位群に属する生徒でも,数個の文を書くことができるようになることがわかった。
- 上位群の生徒の場合は量的にも質的にも豊かな表現ができるようになった。
- 下位群の生徒にもある程度の効果はあるが特に上位群と中位群の生徒には有効であった。
- 身近なことについて数個の文を書くこと-自己表現-ができるようになったが,「書くこと」全般の力の向上については,さらに検討しなければならない。
5. 反省と問題点
- 科学的教育研究の厳しさとその必要性があらためて痛感された。今後はこの経験を生かして教育の実践と研究に取り組みたい。
- 仮説にもとづく指導過程をどのようにすればより効果的であったか,このことについてもっと検討を加え,吟味する必要があった。
- 評価の尺度設定および自作テストの妥当性についての研究が不十分であった。
- 添削指導に要する教師側の時間と労力は当然のことであるが一部の生徒にとっては学習課題がやや負担過重となった点は反省しなければならない。
- 「書くこと」の言語活動を効果的に進めるためには,生徒の実態にあった資料の作成にもっと工夫をすべきであった。
6. 参考文献
- 中学校指導書外国語編 文部省
- 言語活動の理論と実践 桐原書店
- 言語活動の考え方・進め方 大修館
- 雑誌:英語教育 大修館
- 教育研究の実践 福島県教育センター
- 教育研究法 福島県教育センター